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スーパーちんどん・さとう

Author:スーパーちんどん・さとう
ちんどん太鼓担当

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形見 (創作)


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kaijosha.jpg



(創作です念為)


「あの映画監督のところでちょっと働いていたことがあったんですよ」
え~、あの賞を取った監督?
「そうなんですよ、まだ有名じゃなかったけど、やっぱ小道具とかにはすごく気を遣う人でしたね」

「あの画家さんと知り合いなんですよ」
すごいね、有名な人じゃない。
「何回かアトリエにもお邪魔したことがあって…」

彼女は、わかりやすい嘘をいつもついていた。
その独特な風貌、ちょっと服も周りから浮く感じの「普通の人じゃない感」を醸し出していた彼女の話は、それでも最初はみんな興味津々に聞いていたが、それが毎日のように続く中で、だんだん「またかよ…」という雰囲気が支配するようになった。
それでも仕事は進んだし、話をへえへえ聞いていればいいじゃん、という感じが彼女をのまわりを支配し始めていた。
嘘だ、と突っ込むのは大人としてどうか、ってのもあって、決定的な出来事は起こらなかったが、今になって考えてみると、それが彼女を追い込んだのかもしれない。

だんだんみんなが驚かなくなるに従って、彼女の嘘もエスカレートしていくのはみんな感じていた。
このままでは、「マイケルジャクソンと友達」、といいかねないな、と誰もが思っていたけれど、まともに取り合うのもめんどくさい。

そんなある日、彼女は盛大に吐いた。
デスクにだ。
周りは驚いたし、彼女の体調を気遣った。
彼女をソファに横にならせ、吐瀉物を片付けた。
「ちょっと寝てれば大丈夫だと思います。すいません本当に」という彼女でしたが、その日は早く帰って寝た方がいいという皆のアドバイスを受けて、彼女はそのまま帰った。

どうしちゃったんだろう。
みんな不安になったけれど、まあ彼女の言うように明日にはけろっとしているのかもしれない。
突然のことに戸惑ったが、まあみな仕事を終え、その日は帰った。

翌日、彼女はちょっと遅れてやってきて、「どうも私妊娠したみたいです」と言った。

おめでとう、とみんなは言った。
昨日の出来事が吹っ飛ぶような話だったけれど、どうも「相手が誰なのか」を彼女は言わない。
そういえば、そういう「彼氏」的な話を彼女から聞いたことはなかったなあ、と思ったけれど、でもそこで「相手は誰なの?」というのはちょっと聞きにくい。
結婚は?というのもちょっと野暮な感じがして、それはみんなも同じだったようで、誰もそれには触れない、ただ「おめでとう」を彼女に送った。

その後、彼女は休みがちになった。
きっとお産がきついのかな、と話していたが、時たま顔を出すと、その顔が妙にこけているのに気づいた。
新しい命を生み出す力が出るんだろうか?
そんなにきついのかな、と思っていたけれど、ある日、連絡なしに休んだのが二日続いて、なんか家を見に行った方がいいんじゃないか、という話が出た頃、彼女の母親という人から連絡があった。

「彼女、死んじゃったって」
電話に出た女の子がそういった。

え?
どういうこと?
なに?

所長が改めて控えてあった実家に電話をかけると、彼女の母親は平謝りだったそうで、ご迷惑をかけて、と繰り返す。
状況が飲み込めない所長が、「おなかの子は…」と遠慮気味に聞くと、母親なる人物はこういった。

「またそんなウソを…あの子は…もうしわけありません…」

狐につままれたような顔をしている所長の話を聞いて、そうか、妊娠というのはウソだったのか、何か別の病気?だったのか…、と思ったが、所長も死因は聞けなかったという。

二三日は仕事も手につかない感じだったが、そのうち彼女なしの事務所で仕事を回すようになり、彼女の荷物を片付けよう、ということになった。
新たに人も募集しなければならない、そのためには整理もしなければならない。
まあ気は進まないが、母親もこっちで片付けてくれと言うし、仕事と割り切って手の空いた人で整理を進めることになった。

なんということはない。
デスクの上には書類、机の中にも筆記具やメモ、特に仕事上必要とするモノはなかったし、私物というのも、ペン類くらいで、整理ははかどった。

そんな整理の最中、ロッカールームから女性の社員が血相を変えて抱えてきたのが「こけし」だった。

一抱えもある。

彼女のロッカーに入っていたという。

え?
どうして?
なにこれ?

こんな大きなモノを持ち込んだら気がつきそうなもんだが、そういうそぶりはなかったし、どっかのお土産とかそういう感じでもない。
そのこけしは、作りはいいようだが、うす汚れていて、古いものであることがうかがわれた。

黙り込んだ事務所だったが、所長が、「明日燃えないゴミの日だから、出しちゃおう」と言い出した。

そうだよな、別にもう彼女の持ち物はゴミにしちゃってるわけだし…。
こんなに大きければ燃えるゴミというわけにも…。
かといって、寺に持って行くとか、祈祷してもらうとかはなんか逆に怖い…。

ただ、彼女はここに置いていただけだ。
だから、捨ててもいいんだ、という風に、

考えたかった。


結局、所長の意見に異議を唱える人もいず、こけしは会社の入り口のゴミ置き場に置かれた。
明日になれば、回収車が回収してくれるだろう…。


翌朝、会社に行くと、みんな真っ青な顔をしていた。
どうしたんですか?と聞くと、ゴミ置き場を見ろという。

こけしに、誰が貼ったのか、どこのものだからわからないお札が貼ってあった。

事務所の誰も貼った覚えはないという。





(BGM:ガガガSP「フラレ男の哀しい歌」from「声に出すと赤っ恥」)
→もうストレートなタイトルであることがガガガらしい。
これ、タイトルだけでけっこう「ケッ」って思うかもしれないけど、サビもタイトルまんまなんだけど、3分弱の曲の中で繰り返されるとちょっとグッときちゃうところもある。
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ある男の話 (創作)


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kaijosha.jpg



(創作です念為)


今から考えると、あの日は朝からヘンだったんだよね。
朝起きて俺はお茶を飲むことにしてるんだけど、コップに手をかけたら、入れたはずのお茶が入ってない。
まあ、俺の勘違いかな、と思って、その時はそんなに気にしなかった、というか、気にしないようにしたんだ。
なんか怖かったから。
でもまあ、毎朝の習慣だからさ、「んなわけない」とは思ってはいたんだ。

ま、そのことはそんな感じで記憶の底に押し込めていたんだけどさ。
その夜だよ。
家にいたんだ。
そしたら携帯に電話があった。
見知らぬ番号だったから、一度はほっておいた。
けど、数分経ってもう一度かかってきてね。

もしかしたら、なんか携帯なくした親が他の人の携帯からかけてるとか、病院に運ばれたんじゃないかとか、そんな風に思ったわけ。
で、二回目は出た。

そしたら女の人でね。
間違い電話だったんだ。
でもなんか、いろいろと彼女が話し始めてさ。
看護婦をやっていて、色々ストレスがたまるとか、実家暮らしで親と折り合いがあまり良くない、とか。
ちょっと怪しいな、とは思ったよ。
なんかこのまま詐欺かなんかに引っかけようとしてるんじゃないか、とか。

でも、そういう「匂い」ってあるじゃない。
そういうのがなかったんだよ。
で、まあその日は特に何でもない話をして電話を切ったんだ。
ヘンなこともあるモンだ、って感じで。

で、まあそれはそれで終わればなんてことなかったんだけど。
翌朝、なんとなく携帯を見たら、その着信履歴がなくなってることに気づいた。
え?なんで?とは思ったよ。
でも、なんか寝ぼけて消しちゃったのかな、と思ってさ。
あんまり真剣には考えなかったんだ。
別にアレで終わりだと思っていたし。

そしたらさ、翌日も電話がかかってきて。
今度はもうちょっと遅い時間だった。
彼女は、「あ、また間違っちゃった!ごめんなさい!」って。
それもね、まあ俺の番号が何かの番号と勘違いで彼女の携帯に記憶されちゃったんだと思って、そんなに気にしなかった。

で、やっぱまた話をしたのよ。
そしたら、話の流れで、今度会おうか、ってなって。
俺も彼女がいたわけじゃないし、単純に話し相手くらいの気持ちでね。
彼女の家と俺のアパートとの真ん中くらいの駅で、数日後に会うことにしたんだ。

で、飲みに行ってさ。
彼女は、そうね、普通だったよ。
特にどうという感じもなかった。
歳は三十って言ってたけど、それよりは若く見えたかな。
派手でもなく、かといって地味でもない。

う~ん、なんていうか、一番「手が届きそう」な女性ではあった。

で、まあ二度目に会った時に、そういう仲になって。
その後も何となく一緒にいる感じになって。
ま、よかったっていうか、俺としてはラッキーっていうか、番号間違ってくれてよかったな、って思ってた。

まあ、そうなると、彼女が俺の家に来て泊まったり、そういうことにもなっていくじゃない。
俺はアパートに一人暮らしだし、彼女は実家住まいって聞いてたし、そういう流れになるわな。

でね、ある時気づいたんだよ。
彼女が部屋に来ると、減るんだ。
いや、金が、とかじゃない。
金目の物なんかそもそもないし。

飲み物が減るんだ。

例えば、ペットボトルのお茶だったり、スポドリだったり、そういうのが異常に減る。
いや、彼女が夜中に起きて、俺が知らないウチに呑んでるのかとも思ったけど、いや、でも2リットルほとんどあったのがカラになってるのはおかしいだろ。

いや、最初は勘違いかとも思ったさ。
俺の記憶違いかな、って。
彼女に聞いても、知らない、って言うし。

でも、そういうことが続くとさ、やっぱ気になるじゃない。
だから、注意深くお茶の残りの量とかを見るようになった。
そしたらさ、確実に減るんだ。
減ってる。
彼女が家に来ない日は減らない。
彼女が泊まると減るんだ。
たいがい残量ゼロになってる。

でも彼女に聞けば「勘違いじゃないの?」「知らないよ」って言われるだけだし。
それもウソをついてる感じじゃないんだ。
俺もまあお茶なんか気にしなきゃいいか、とは思ったんだけど、でもやっぱり気になるじゃない。

なんか気持ちが悪いっていうか。

でね、俺は最初に言ったけど、お茶を普段から飲むようにしてるから、とあるメーカーのお茶の2リットルペットボトルを、まあ切らさないように、コンビニで買ってたんだけど。
彼女が泊まる日に、それを残量ゼロにしてみようと思って。
ちょうどゼロになった時に、その日はお茶を買わずに彼女に泊まりに来いよって言ったの。

ま、彼女は来たし、コンビニで買ったお総菜とかでちょっとビール飲んだりして。
いつものように映画のDVDなんか見て、寝たわけ。

で、朝起きたら、そりゃそうだ、お茶は元々なかったんだから減るも何もない。
彼女もいつも通り起きてさ、その日は寝坊しちゃったから、朝も食べずに慌てて二人で一緒に家を出た。
その時は普通だったんだけどね。

その日からだよ。
彼女と連絡取れなくなってさ。
よく考えてみたら、看護婦だって聞いてたけど、降りる駅しか聞いてなかった。
その駅のまわりにはそもそも病院がない。
まあ、そこから通ってる、ってことだったら駅から離れてるトコだったのかもしれないけど、小さな医院とかをさがすわけにもいかないし。
家も降りる駅しか聞いてなかった。
まあ、なんかの都合で来れないのか、急に病気にでもなっちゃったのか、事故にでもあったか、とか色々考えたけど。
でもまあ、もう連絡を待つしかなくて。

けども、もう1ヶ月経つけど、彼女からの連絡はないままで。
もうなんだか煙に巻かれた気持ちになってさ。

そしたらなんか転勤の辞令が出てさ。
地方都市に行かなきゃならなくなって、家も引き払うことになった。
まあ、そうなれば、彼女がウチにたずねてきてもわからないな、と思ったけど、その頃になると冷静になってさ。
やっぱおかしいじゃない。
お茶が減る、って。
だから、これを機にまあ彼女のこと忘れようって思ったんだわ。

でさ、引っ越しの荷物をまとめてたらね、台所のサラダ油がさ。
残量ゼロになってたの。

いや、俺は自炊なんかしないからさ。
というか、台所が狭くて、カセットコンロくらいのコンロが申し訳程度についてるだけだしさ。
オフクロにはフライパンくらい買いなさいって言われてたけど、まあ買う機会もなくここまで来ちゃってたんだ。
ま、最初にオフクロが送ってくれた、醤油とかカップ麺とかレトルト食品とかと一緒に荷物に入ってたサラダ油でね。
置いておいただけ、っていうか、まあ自分で使ったって記憶がない。
台所の肥やしになってたサラダ油なんだよ。

でね、よく見てみると、フタがあいてないんだ。
フタを空けないで蒸発するなんてコトもないだろ?
それが空っぽなんだから。
なんだか、怖くなっちゃって。

いや、彼女との最後の夜に減ってたかどうかはわからないよ、今となっては。
サラダ油なんて気にしたこともなかったから。

でもね、なんか、あの夜に残量ゼロになったんじゃないかって思えてならないんだわ。






(BGM:cargo「Can't Take My Eyes Off You」from「Francfranc's BEST Beautiful Covers Fly High Megamix」)
→洋楽の超名曲をカバーしてつなげました、という1枚。
ま、どうなんでしょうかね。
基本「ダンスマニア」的な作りでありまして、あまり心に響くことはないんですけど、なんかアタマ空っぽな人たちが「うぇ~」とか言いながら集まる場所にかかってそう。

妄想の彼女 (創作)


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kaijosha.jpg


(創作です念為)

飲みに行った帰り、彼女から身体をすり寄せてきた。
付き合ってる彼氏とうまくいってない、という話は飲んでる時からしていた。
その晩、彼女と寝た。
なんとなくだった。

挿れている時、彼女は目をつむっていた。
けれども、感じてないわけじゃないようだった。
声を上げていたし、俺の腕を強く掴んでもいた。
コトが終わって、彼女はそのままめをつむったまま眠ってしまった。

翌朝、僕が起きる前に彼女は起きて、服を着ていた。
どこかぎこちなくホテルの出口で分かれた。


その晩、携帯に彼女からメールがあった。
「ごめんね」
僕は、「こっちこそごめん」と返した。
これは、昨晩のことはもう終わり、という合図だ。
このことは、二人の秘密になった。

僕は会社で彼女の姿を見かけるたびに気になるようになってしまった。
「あの日のことは内緒だよ」と彼女の目がいっているような気がした。
二人の秘密ができたことで、二人の心は急速に近づいた。

時に挨拶をするけれど、それも余計なことは言わない。
けれど、その挨拶は「ただの挨拶だよ」「内緒だよ」という符丁でもあった。

僕は、オナニーするたびに彼女との夜を思い出すようになった。
あの日はただ挿入するだけのセックスだったけれど、想像の中で、僕は彼女を言葉で責め、舐めさせ、後ろから何度も突いた。
彼女は歓喜の声を上げ、僕と一緒に果てる。
そこで僕の欲望はティッシュに吐き出される。


ある日、残業の夜、彼女とエレベーターが一緒になった。
まわりには誰もいない。
けれども、俺たちは何も言わなかった。
あの日のことはすっぽりなかったことになったかのように。

けれどもエレベーターを降りる瞬間、彼女の髪の匂いを感じた時、僕はガマンができなくなった。
思わず彼女の手を握った。
そして、そのまま二回目の秘密の晩になった。
彼女は同じように目をつむったまま身体を開き、僕を受け入れた。
前回と違ったのは、挿れる前、彼女は僕を咥えた。

この翌日から、僕はエスカレートするようになった。
会社の人目のつかない場所でキスをした。
彼女は、拒むでもなく受け入れていた。
週に一度くらいはホテルに行くようになった。

もしかして、本当は彼氏なんかいなかったんじゃないか、と思った。
彼女は大人しいタイプだ。
服装も地味で、派手に遊んでいるようには見えないし、彼氏がいないタイプにも見える。
大学の同級生で、三つ四つ先の駅の会社で働いているというけれど、本当は、彼女は僕とこういう仲になりたくてウソをついたんじゃないか。

僕のオナニーの妄想にはまだまだ届かないけれど、彼女はセックスに協力的になった気もする。
相変わらず、コトが始まって終わるまで彼女も僕も言葉を交わすことはないし、ほとんどの時間、彼女は目をつむっている。
けれど、僕のモノを咥える彼女から、僕は愛情を感じるような気持ちになっていた。


そしてあの晩になる。
僕は、彼女のアパートを調べ、いきなりたずねることにした。
彼女の恋人なんか、きっとウソだ、と思い込んでいた。
彼女は驚いていたけれど、僕を部屋に上げてくれた。
部屋に入るやいなや、お茶を煎れてくれるという彼女を僕は押し倒し、コトにいたろうと思った。
彼女もそれを待ってるように目をつむった。

その時、ドアがノックされた。
彼女は、急に真顔になって、「やばい。かくれて」と僕に耳打ちした。
狭いクローゼットに僕は押し込まれた。

やってきたのは男だった。
声が聞こえてくる。
と同時に、「どうしたの?」「今日は残業で来れなかったんじゃないの?」と彼女は平然と、さもいつものことのように言った。

僕は激しく嫉妬した。
今、ここで出て行けば、彼と彼女の仲は終わって、僕とうまくいくんだろうか。
それとも、このまま彼女との逢瀬を重ねていった方がいいのか。
アタマの中はグルグルとこのクローゼットを出て行くかどうかでパンクしそうだった。

と思っていたら、彼女と彼は始めた。
彼女は僕の妄想の中の彼女に豹変した。
彼の上にまたがり、彼に「愛してる」「もっとして」「すごいよ」「もっと突いて!」と、僕との時には上げないような声を繰り返していた。

クローゼットをそっと小さく開き、僕はその様子を覗いた。
そのくらいしても、彼女も彼も気づきそうにない。
細めに開けたその隙間から、彼女の豹変した姿が見えた。

僕は、その姿を見て勃起してしまった。
思わず、オナニーをしようとしてしまう自分が腹立たしかった。
けれども、あまりに彼女が妄想の彼女と同じで、その手は止められず僕はズボンの中に果てた。

それでも、彼女と彼は終わらなかった。
一度コトは終わったようだったが、すぐにもう一度目が始まった。
おもちゃを使い、彼にすがりつき、彼女は彼を挑発し始めた。

僕は気が遠くなった。
何も聞きたくなかった。
何も見たくなかった。
耳をふさいで、目を閉じている間に、彼女と彼の妖艶な時間が終わった。

彼がシャワーを浴びにベットを立った。
「あ、ちょっと待ってて。先に入ってて」と彼女は言うと、クローゼットを開けて、口に人差し指を当てて僕を玄関に腕を引っぱった。
そして、僕をドアから押し出すようにして、小さい声でこう言った。

「またね」

ドアが静かに閉められ、僕はその場から逃げるように走った。
そして、駅までの帰り道、僕は、彼女のメールと着信を拒否した。

僕は、二度と誰ともセックスできないような気がした。







(BGM:RCサクセション「ぼくはぼくの為に」from「シングル・マン」)
→トランジスタラジオ以前のRCって、すごくどこか厭世的で攻撃的な感じがして、それはそれですごく好きなんだな。
ひねくれてる、というか。
この曲も、なんだかひねくれてる。
いわゆるこの辺の、ハンドインハンドを否定する感じ、好きだったな。
その後ロックの神様になっちゃうわけだけれど。
ロックの神様になって、すれ違うだけでわかるようになる前、一般人だったときの歌、という感じ。

もうがまんできない


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(創作デス念為)

彼は一生懸命だったように見えた。
大学で私と同じクラスになった彼は、大学の一年生の時にであったボランティア活動に熱中していた。

そもそも彼は「いい人」だ。
そして「デキる」人でもある。
クラスコンパの幹事も引き受けても、そつなくこなす。
ボランティア同士の連絡の取り合いも率先してやっていた。
そもそも彼は困った人がいたらほっておけないタチだ。

そんな彼を慕って、多くの仲間もまわりにいたけれど、どこか彼はいつも孤独に見えた。
頼られる人というのは、そういうものなのかもしれない、と私は思っていた。

彼に好意を寄せる女の子は、私が知ってるだけでも何人かいた。
後輩の中にもきっといたと思う。
冷静に見れば彼はかっこよかった。
最新のファッションに身をまとってはいなかったが、彼に似合った感じのセンスを感じさせるモノがあった。
頼れる人でもあったから、そりゃモテるよね、ってみんな思ってた。

でも、その中の一人と付き合っていたのか、そうじゃないのか、浮き名はいくつかあったけど、「公認の恋人」と呼べる人はいなかった。
だからこそ、まあ彼に熱を上げる女の子はその熱からなかなか醒めなかったわけだけど。
コンパになると、帰り際に彼のまわりはお持ち帰りされたい女の子でざわざわしたりしていた。

大学も4年になると、まわりは就職のことを考え出す。
今のように企業訪問の解禁日とかなかったから、けっこう我先に活動を始めてる人もいた。
企業の入社試験を受けたり、公務員の資格を取ろうとか、教員採用の試験を受けようとか、それぞれの道を歩み始めるための助走を始める。

それは、どこか丸っきり自分の将来のための助走で、互いに励まし合うことはできても、協力して乗り越えることはできない壁で、大学時代のゼミや集団による研究や学問の趣とはちょっと違ってくる。
そういえば、大学に入るためにこんな風に努力したっけ、と思い出す。
大学に入ればなんとかなる、って思っていたからこそあの時がんばれたのに、なんかまだまだこんな自分のための努力を続けなければならないとは、なにか気が遠くなった。
けれども、まあやらなきゃしょうがない。
目の前の自分の壁を越えなければ未来がない、と私たちは思っていた。

先のボランティア活動も、3年の頃に比べてぐんと参加できる機会が減った。
気持ち的にも余裕がなくなっていくのだ。

でも、彼はいい人だったから、それまで築いた関係を壊せなかったんだと思う。
3年の頃と同じように、いや、なんかそれ以上にボランティア活動に熱を上げていった。
それは同級生の私たちからすると、「お前らは自分のことばかりで、この弱い人たちのコトを捨てるのか」と責められてるようにも見えてしまって、だんだん彼とは溝ができていった。
もちろん、彼はそんなことは言わなかったんだけど、どうしても私たちの中には、彼ががんばることが罪悪感に変換されてしまっていた。

彼を好きだと言っていた女の子達も、なんだかんだ自分のための助走に入る。
そうなると、一時の恋愛感情よりも、これから先の長い人生の方にチカラが入っていくことになる。
それに、彼は4年生なのにまだボランティア活動に没頭しているのだから、「先がない人」にも見えた。

彼は結局、自分のための助走をしなかった。
私たちが穴を空けたボランティア活動に奔走し続けた。
自分のための助走は、なにも弱い人を裏切ることではない、と私は思ったけれど、彼はそれが出来なかったのかもしれない。
もちろん、それで彼が私たちに恨みごとを言ったことはない。
けれども、私たちも彼にどう声をかけていいかわからなかったし、それは彼も同じだったに違いない。

彼は一人でいることが多くなり、その横顔は孤独を増し、どんどん表情がなくなっていってるようにも見えた。
でも、私たちが何かで声をかけるといつもの笑顔に戻ったけれど。

卒業式の日、彼はボランティアに行っていて出席しなかった。
すでに彼との溝が大きくなっていた私たちはそのことには触れず、なかったことにしてスーツや袴の華やいだ席にいた。

どこか居心地は悪かった。
けれども、彼に就職活動するようにいうこともできなかったし、卒業式に出るようにも言えなかったのだからしょうがない。
彼の代わりにボランティアに行くということだって、やっぱりできなかった。

けど、卒業式後の夜に行われた謝恩会に、彼はフラッとやってきた。
みんなは来てくれたんだ、と喜んで彼の元に駆け寄った。
「いや、だって、これは先生に感謝する会だし、ボランティアの方も終わったから」
彼も笑顔だったし、乾杯もした。
酔っていてよく覚えてないけど、色々な話をしたようにも思う。

みんな正装の中、彼だけはボランティアから駆け付けたいつものジーンズにトレーナーだった。
それは目立ってはいたけれど、どっちかというと彼らしかったし、逆にステキにも見えた。
私たちにとって、彼はやっぱり頼りがいのある、太陽のような人だと改めて思った。

解散して、二次会に誘ったけれど、彼は「今日は疲れたから帰るわ」と言った。
その横顔は、またあの表情がなくなった顔だった。

その帰り道、あの事故は起こってしまった。
暴走してきた車に彼ははねられた。
彼を引きずりながら交差点のカフェに正面衝突した車は大破し炎上。
彼も助からなかった。

今、数十年経って思えば、彼は、私たちの「このまま卒業していいのだろうか」という居心地の悪さを解消させるために謝恩会に来たような気がする。
卒業に浮かれて未来への夢や希望を語る私たちの話を、彼はどんな気持ちで聞いていたのだろうか。
今あの場に戻れるのなら、浮かれた話をしていた自分を戒めたい気持ちでいっぱいだ。

最後の最後に、彼はなにを思ったのだろう。
迫り来る車に、なにを見たのだろう。
多くの人は阿鼻叫喚で逃げたらしいが、彼はなぜ逃げなかったのだろう。

彼の回忌法要を知らせる手紙が今年も届いたけれど、私は今年も行かない。
そんな場所で、彼になにを話せばいいのか、私にはわからないし、それでも毎年命日に集まっている同窓生に、なにかイラ立ちも感じるのだ。






(BGM:ジャズトロニック「SOUTH OF THE BORDER」from「CANNIBAL ROCK」)
→まあ、ジャズというかエレクトロの方に傾いている感じがするが、このアプローチ、すごく好きですね。
なんだかんだ、やっぱジャズだと思うんですよ。

地獄は続く


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(創作です念為)

ごめんなさい。
睡眠薬を入れました。
あなたの身体に触ってみたかったから。

眠れないと言っていつも行くお医者さんに処方してもらいました。

あなたがボランティアとして来る予定の木曜日。
いつか、あなたが飲むジュースに入れようと思ってました。
でも、他の人がいたらできません。
他の人が来る予定があったらできません。
あなたが急に倒れでもしたら、それはオオゴトになってしまうし、いや、僕のゆっくりな動きではジュースに薬を入れる時にバレてしまう。

ウチには多くのボランティアの人が出入りするから、その機会を掴むのは大変だった。
半年以上、その機会を狙ってました。

そしてついさっき、僕はあなたの湯飲みに入れたんです。
睡眠薬。

あともうちょっとで、あなたは眠ってしまうと思います。
僕に話しかけている声も途切れ途切れになってきました。


あなたに恋人がいるのは知ってる。
仕事場の人で、時に彼の愚痴も話してるよね。
「尊敬できる人」なんかじゃなくて、あなたに愚痴を言われる人になりたかった。

尊敬されたり、車いすで一人暮らしなんて立派ね、とか言われるの、もう疲れたよ。
そんなんじゃない。
普通に、あなたみたいに、どこかで誰かと出会えて、誰かと恋におちて、ケンカしたかったんだ。

でも、よく考えたら、僕の行動範囲はそんなに広くはないんだ。
あちこちに出かけはするけれど、僕はいつだって弱者で、みんなに優しい目を向けられるだけ。
でも違う。
僕はね、尊敬されたかったわけでも、優しくして欲しかったんでもない。

時に狼になって、君に襲いかかりたかった。
でも、僕にはそんなことはできないから。
それに、人付き合いもよくわからない。
ケンカって、実際親とは口げんかになったことはあったけど、一人暮らしを始めて、ボランティアを頼んでなんとか生活をつないできたからさ。
彼らとはケンカなんかしたことないよ。
だって、頼まなきゃならないし。

それに、たいがい僕にケンカを売ってくる人がいないよ。
ドラマの中で見るくらいで。
アレは僕には関係がない世界の話のような気がしてた。


こんな方法しか思いつかなかった。
女性の身体を触りたかった。
いや、あなたの身体を触りたかった。

ああ、もう薬を入れちゃったから、あなたはもう尊敬もしてくれなくなるだろう。
来てもくれないかもしれないし、この話が伝われば、そもそも僕の生活も終わりかもしれない。

でも、それと引き替えても僕にはこうするしかなかったんだ。
もう、全てを終わらせてもいい、とさえ僕は思ってる。


あとは、君が机につっぷして、こっち側に倒れてくれることを祈ろう。
じゃなかったら、全てに意味がないもんね。


(記録)
被告は、床に倒れた女性の上に、車いすから落下。
打ち所が悪く、その勢いで女性は骨折。
被告は、「突然倒れた彼女を助けようとしておちた」と供述したが、被害者が飲んでいた残されたジュースから睡眠薬が検出され、故意に被害者を昏睡させようとしたことがわかった。
非常に悪質な手口であるが、初犯であること、被告には同情すべき点があるとして、被害者との示談が成立していることから、執行猶予付きの判決が成された。
なお、被害者はその後も被告のボランティアとして活躍する意思もあり、その姿は多くの人の賞賛をうけることになった。



彼の闇は、まだまだ地獄のように続くのであった。







(BGM:David Sylvian「I Surrender」from「Everything and Nothing」)
→この人のこのねちっこい声がすごい好きで、こんな声を出したいと思うのだけれど、ぜんぜん遠いですね。
これは9分を超える曲なんだけど、なんだか特にあまり展開もなく終わるので、彼の声を堪能できます。
というか、それだけに集中できます。

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