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スーパーちんどん・さとう

Author:スーパーちんどん・さとう
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「存在と認知」


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というわけで、先日出会った男が宇宙人だったんですね。
彼が誰かを指で指すとその人は消えるんです。
だけれど、まわりの人はそれに気づかない。

彼によれば、それは人の「認知機能」をいじってるだけで、その人を消しているのではないのだと。
どういうこと?と聞き返すと、つまりは人は他人から認識されて始めて認識されるのだと。

例えば、誰も来ない山奥で一人ひっそり暮らしている人がいたとする。
けれども、その人のことを誰も知らなかったら、まあその人はいないのと同じだと。
彼が消した人間は、その状態にしただけで、物体として無くなるとかそういうことではないのだと。

でも、人間は必ず誰かから生まれるから、産んだ人はその赤ん坊を認識しているはずで、完全に社会の認識から人を消すというのは無理なのではないか?と問うた。
いや、そうじゃないのだ、と。
認知をいじるというのは、認識を消すことも可能なのだと。
だから、全ての人の中から当該人物の認知を全て消せば問題はないのだ、と彼は言う。

けれども、彼が生きていたという記憶を全て消したところで、彼は存在し続けるはずではないか?と。
すると、彼は苦笑いをして、違うのだと。
存在はあくまで認知があってのことで、じゃなければ存在しないのだと。

例えば、だまし絵というのがあるだろう、と彼は続ける。
見ようとしなければ形は見えないだろう?と。
動物の絵だと思ったモノの中に果物があっても、動物の絵だと思ってみていれば果物は見えない。
つまり、そこに書かれている果物は存在しないのと同じなのだ、と彼は言う。

いや、でも果物の絵は描かれているではないか。
だから認知はされていなくても存在はしているじゃないか、と彼に食ってかかった。
彼は「なるほど、それはそうかもしれない」と言ったが、でも、存在はしないのだと。
認知されなければ、存在はないのと同じなのだと。

存在そのものの意味がどうも僕と彼は違うらしい。

そこにある、ということが存在で、認識され、識別されることは存在の先にあるモノだとオレは思っていた。
彼の星ではそれは違うのだと。

彼の理屈によれば、人は愛されて、始めて愛するという状態になると言える。
片思いは存在しない。
一方的な思いはそもそも存在しないのである。
でも、この星、地球では、たいがいの恋は片思いである。
つまり、認知されない存在というのが確実に存在するのである。

認知されない存在は存在しなくてもかまわない、という論理は、人の思いや努力さえムダにしてしまう。
成功以外がムダだというなら、我々の努力や、人に認知されようと切磋琢磨することは意味がなくなってしまう。
でも、それがなければ認知されないではないか。

人は一人で生きているわけではない。
他人に認知され、多くの人に信頼を受け、その中で毎日を他人との関わりの中で作っていくことが重要で、多くの人はそこに身を削っている。

彼の論理だと、結局、一回回って、誰も認知されない山奥で暮らすのと変わらないのではないか。
存在同士のぶつかり合いが新しいモノを作っていく。
存在を認めあいたい、認めさせたいぶつかり合いが、何か新しい関係を作り、新しい社会を作る。
なのに、存在を認められなければいないのも同じ、というのでは、そもそもスタートが彼と僕らでは食い違ってしまう。

どのみち、この彼とのやりとりはもう禅問答である。
生きている世界、生まれた世界が違うのだから、刺身を食えるか食えないか、生なんて…、って話と同じだ。
それはもう光年の距離ほど埋めようがない。

だから、もう考えはどうでもいい。
少なくとも、この地球で、そうやって人を消すことはするな、と僕は彼に言った。
それさえしなければ、君がどういう思いや信念を持っていたとしても別にかまわない。
そう彼に言うと、彼はうなずいて言った。
そうする。
どっちみち、自分の星には帰れない。
帰還船を見送ってしまった時点で、帰るのは不可能になった。
ここで生きていくしかないが、ここのルールはよくわからない。
だから、これからもここのルールを教えてくれ、と彼は涙を流した。

その後も一度彼に会った。
今はバイトでなんとか食いつないでいるという。
あれから誰の存在も消していないとも言っていた。
俺もバイト暮らし。
少ない持ち金をお互い披露して、店に入るのは無理だと笑いあい、コンビニでビールと柿のタネを買って植え込みに座って二人で飲んだ。
「エイプリルフールに乾杯!」






(BGM:松任谷由実「瞳はダイアモンド」from「Yuming Compositions: FACES [初回盤]」)
→これは松任谷さんの作曲なんですね。
と言われて聞くと確かにそうだわ。
松田聖子さんはそれを感じさせない感じもあって逆にすごいかも。
希代のシンガーだなと思う。

hatomiiboshuu.jpg

kabukiboshuu.jpg
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ごめん (創作)


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惚れた私が悪いのか。
二十の後半から三十の前半まで、女の盛りを彼に捧げた。
バージンだったし、彼以外の男も知らない。
彼とはうまくいってるつもりだったけど、それは私の勘違い。
私は二番手だったんだ、って気づいた時にはもう終わってた。

私だけが気づいてなかったみたい。
ちょっと年下の職場の子がさかんに私にアプローチしてきてくれてたけど、そういうコトだったんだと今になって気づく。

確かに彼は仕事もしっかりやっている。
マジメだし、私のことを考えてくれる。
言って欲しいことをきちんと言ってくれる。
かわいそうになるくらい、私のことを考えてくれる。

荒れている私に、「そんなに飲んじゃダメだよ」と優しく彼は言ってくれる。
帰る時まで付き合ってくれる。
タクシーを拾ってくれて、私の家まで送り届けてくれる。

こんなにしてくれるのに、彼を部屋にあげたことはない。
深夜に彼は私の家の前でタクシーを拾って帰る。
それでも彼はいつも私に寄り添ってくれる。

恐らくは、今、彼に寄り添っていけばきっとこの十年は取り返せるんじゃないか。
そんな気もする。

こんなに理解がある人は、そして優しい人はきっともう現れないかもしれない。
私も三十後半なのだから、ここで決断すべきなのかもしれない。

いや、すべきだ。
わかってる。
心の底からそう思う。

元彼は、今思えば確かに不自然なことが多かった。
電話をしても出なかったり。
友達を紹介してくれたこともなかった。
ただ、会ってセックスして、さようなら。

それが恋なんだと思い込んでいた。
大人なんてこんな感じなんだろう、と思っていた。

でも、心の底ではいつだって、彼の友達を紹介してほしかった。
家族を紹介してほしかった。
時に、わいわい、彼の友達と一緒に飲みに行ってみたかった。
私が落ち込んで電話した時には、電話に出てほしかった。
仕事が忙しい、って本気で信じちゃってた。

でも、そう思っても現実にならないと、その「思い」自体を人は封印してしまう。
そんなこと思っていたな、って忘れちゃう。
でも、会えてるからいいか、って、絶望してしまう自分にブレーキをかけていた。

今ならわかる。
そうやって、「幸せのふり」を私はしてた。
そうしたかった。
ちょっとでも心の底をのぞいたら、絶望してしまうだろうこともわかってた。

なんで?どうして?て彼を問い詰めたら、きっと彼は言葉に詰まるんだろうことも私、わかってたのに。
なんで絶望に向き合えなかったんだろう。

それでも毎日は矢のように過ぎていく。
絶望に向き合わないまま、十年が本当にあっという間に終わっちゃった。
女の旬はきっと過ぎちゃったな。

新入社員の女の子たちはきらびやかで、男性社員のウケもいい。
私にかけられる言葉なんて、「コピー」「お茶」。
そもそもなんで仕事してるんだ、私。
家賃のため…。
まあそんだけだよ。

だから、その年下の彼とやり直せばいいんだろうな。
そうしたら、きっと絶望も幸せも、一緒に手に入れることができるのかもしれない。
もっと自由に、この世の中を泳いでいけるんだろうな、って思う。

ココで彼に、「ずっと一緒にいて」と言って、部屋にあげてあげればいい。
それだけなんだけど。

でも、今は「死にたい」「死にたい」って酒を飲んでいたい。
ダメになっちゃうまで、底なし沼に落ちたい。
彼と一緒にやり直せばいいってわかってるのに、でも、今の私は、「死にたいねえ」って酒を飲んで路上で果てる人生が魅力的に思える。

これまでの絶望を私は取り戻さなければならないのだ。

ねえ、飲もうよ。
死にたいよね。
もう、ホント、死にたいよね。

ごめんね。







cddaihoushutu.jpg
ブログ用

(BGM:Snake Thing「Ride The Wild Pony (Shaven Mix)」from「Sound of The SUN」)
→テクノということでいいのだろうか。
こういう単調なリズムをフロアで大音量で繰り返されたら、やっぱ身体は反応するのよね。
で、時にブレイクしてしまうと、次のオンリズムで倍のってしまうという。
こういうの好きなのよね。
ただ酔っ払ってノリたい。

足がない


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(スーパー猛毒ちんどんの「足がない」のプロットの一つの物語)

施設に入ったら、自分のペースで生活はできない。
食事もお風呂も決まった時間にしなきゃならないし、そもそもこうやってカラオケなんかに自由には行けない。

私は大学生で、車椅子に乗っているけれど、大学の同級生や福祉の関係のサークルの人たちが一緒にカラオケに行こう、なんて誘ってくれたりする。
行きたいコンサートにも声をかければ「私も行きたい」なんて人がいて、一緒に行けたりもする。
時にはお酒を飲んだり、仲間として彼らが迎えてくれているのが嬉しい。

彼らも「コレまで車椅子に乗った人としゃべったこともなかったけど、別によくよく考えれば普通だよね」みたいなことを言ってくれたりする。
そりゃそうなんだけど、なかなかそういうことに多くの人が気づかない。
だから私なんかはそういうことを気づかせる役割もあるんだな、って思ったりした。

居酒屋に行っても、やっぱり段差があったりして一人では乗り越えられない。
時に座敷だったりすると、抱きかかえておろしてもらわなきゃならない。
でも、みんなそれを自然にやってくれる。
私は、どっか「青春」を彼らと過ごしていると思っていた。

そのサークルというのは規模が小さくなく、いろいろな人がいて、私も誘われてそこに顔を出すようになったけど、やることと言えば福祉の勉強とか、そういうのよりは飲み会だったり、どっか子どもの集まりにボランティアに行ったり、その程度のコトだ。
だから私も気楽に彼らに付き合っていたところがある。

その中で、やっぱり中心人物というか、そういう人はいて。
彼はことあるごとに私を誘ってくれたし、入りにくい居酒屋さんでも、「行こうよ行こうよ」と無理矢理誘ってくれるというか。
「あそこは狭いから入りにくいし…」なんて私が躊躇してると、「大丈夫だよ!」「それに、そうやって車椅子の人が行かなかったら、きっとお店の人も気づかないんだと思うし」と言ってくる。
そう言われると、そうかな、という気もして、私も彼が一緒ならどこにでも行けるような気持ちになった。

私はサークルの部室に行くたびに彼がいてくれたらいいな、と思うようになっていた。
とにかく彼のそばにいたい。
彼と話していたい。
もうその時から好きになっていたのだと思う。

私はそもそも好きになった人がそれまでいなかったので、その感情に戸惑った。
これが恋なんだ、と思うのには時間がかかったけど、一度それを認識すると気持ちはエスカレートしていった。
夜寝る時も、ご飯を食べる時も、朝起きた時も、彼のことが頭から離れない。
そのうち、私は彼のことを考えるたびに、彼に抱かれることを夢想するようになった。
セックスなんて自分には遠い世界の話だと思っていたのが、肌を合わせたらどれだけ気持ちがいいのだろう、と思うようになった。

でも、私は歩けないし、手も不自由だ。
彼の役に立てるとは思えない。
恋人になったとしても、私にはなにもできない。
そもそも服を自分で脱ぐことすら難しい。

それでも、彼のそばにいられればイイ。
彼を見ていられればいい、と私は自分を納得させ続けていた。
その先を望んでも上手くいくはずがない。

でも彼は優しい。
いや、私に優しいわけじゃない、みんなに優しいんだ、彼は。
そういう彼の言動に、私はとにかく自分の思いを顔に出さないようにと必死だった。

ある日、飲み会があってみんなで部室に集合していたんだけど、彼が来ない。
そのうち、他のサークルの男の子が「あいつ、またB子のとこで寝てんじゃないの?」と言った。
私は心臓がキュッとなった。
「やっぱあの二人つきあってんの?」他の子が聞く。
「知らなかったの?」また他の子が言う。
そういえば、B子ちゃんもまだ来てない。
「アイツ、実家でちょっと遠いじゃない。だから今もう彼女のアパートで半同棲してんだよ」
「へえ、まあ仲良きことは美しい、か」とみんなが笑った。
私は心臓がバクバクして吐きそうになった。
「でもいくらなんでも遅刻しすぎだろ!」と誰かがちょっと怒り始めた時、彼とB子ちゃんは息を切らせて一緒に部室に入ってきた。

「おせえよ!」「ごめんごめん!」そんなやりとりがあって、でも居酒屋さんの予約時間も迫っていたので遅刻のことはあやふやなままみんなあわてて部室を出た。

私はあまりその間の記憶が曖昧だけれど、誰かに車椅子を押されて居酒屋の席についていた。
乾杯があって、誰かが私に話しかけもしたけれど、私はきっと上の空だったんじゃないかと思う。
何の話をしていたかも思い出せない。

ちょっとしてから、彼が立ち上がって言った。
「今日、なんとAさんの誕生日で~す!」
ボケッと「彼は私の誕生日を覚えていたんだ」、と思った。
みんながハッピーバースデーとか言ってくれる中、彼が花束を私に渡してきた。
「この花束をBと買いに行って遅刻しちゃったんだよ!」と彼はみんなに言った。
「それならそうと連絡くらい入れろよな」と誰かが言って笑いが漏れた。
私はもう何が何だかわからなくなって、真っ白になってしまったけれど、とにかく涙が溢れてしまった。
「泣くなんて大げさな…、そんなに高いもんじゃないから気にすんなよ」と彼がいい、「お花屋さんに知り合いがいたから勉強してもらったんだ」とBちゃんが彼の隣でペロッと舌を出した。

そうだよね、そうだよね。
ありがとう。
そうだ、誕生日だったよね、私。
そっか。
そうだよね。

私はその晩から、大学を卒業したら施設に行ってもいいのかな、と思うようになった。
絶対に行きたくなかった場所だったけれど。









(BGM:RCサクセション「NEW SONG [Live]」from「THE KING OF LIVE [Disc 1]」)
→RCはライブ盤が多かったと思う。
ライブバンド、という気持ちが大きかったのだろうか。
こちら、清志郎さんがメインボーカルじゃないんだけど、そういうことは全く関係なくこれはRCサウンドだといういいトラックだと思う。
むしろここで好き勝手にバックでシャウトする清志郎さんがかっこよかったりする。

ミヨちゃ~ん


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あの廃墟に行ったのは、昨日の晩。たくさんの落ち武者が襲ってきたから逃げ出したけどね。そしたらなんとマッハの速さで追っかけてくるもんだから、オレはジェットの速さで逃げようとしたんだけど、そもそもオレのバイクはそんなに速くないからさ。ヤツら俺を追い抜かしていったわけ。で、四方八方あちこち飛び散って、一人は民家の屋根に、一人は田んぼのかかしに、一人は中華屋の中華鍋に飛び込んだりして。もうそりゃ町は大騒ぎさ。じいちゃんは腰抜かすし、婆ちゃんは念仏唱えるしさ。ああ、オレのせいだな、って思ったけど、言わずにいたんだ。まったくどうして貝になりたい。今日になっても追いかけられてる中華屋の親父さんが信号無視で捕まって、そしたら今度はその警官を追いかけ始めたから切符は切られなかったって言ってたけど、そもそもヤツらはなんなんだ。そのうち町長が騒動を納めようと音速の落人を連れてきたからさあ大変。もう町から人はいなくなっちゃった。ヤツらに乗っ取られた、ってわけだ。(※)オレはというと、ひっそりと部屋の中にいるんだけど、だんだん腹も減ってきたし、部屋を出なきゃなんねえな、と思って窓から外を見てみると、落人が中華鍋振ってるし、落ち武者が交通整理してやんの。なんだかんだいいヤツらだなあ、とか思ってるワケだけど、とはいえ見た目が怖いから。どうにか隠れてスーパーに行こうと思ってるんだけどね。あ、そうそう、携帯が通じないんだよ。困ったなあ。料金払ってなかったっけ。ウーバーさんにでも出前を頼もうと思ったけど、そもそも携帯が通じなきゃ意味ないじゃん。しかもウーバーさんが落人だったりしてもなんだかなあ。でもまあ料理には罪はないか。旨ければいいもんなあ、って、だから携帯通じないんだって。ああ、困った。メシがなければケーキを食えばいいじゃないったって、ケーキだってあるわけがない。あ、でも小麦粉があるからケーキを作ればいいじゃない。いや、作ったことねえよそんなの。小麦粉だけでいいのか?イチゴはどうすんだよ。って、よく考えたら、小麦粉は食えるんじゃん。でもなあ、食ってもむせるか。なんならガスも止まってるから焼けないし。あ、焼けないならケーキも無理か。いや、そもそもケーキってフライパンで作るのか?ウチにはフライパンしかないじゃないか。ああ、困った。あとウチにあるのは額に入れて飾ってある鉄道写真。そういえばあっちこっち撮りに行ったっけ。そう、オレ、撮り鉄。線路に入って怒られて駅員とケンカしたのがオレの武勇伝。もちろん口喧嘩。そう、口喧嘩強いんだよ。お袋からはよく「口から先に生まれた」とか言われた。けど、んなことあるわけないから、多分普通に頭から生まれてきたと思うけど。でも逆子なら足からか。ああ、そんなことはどうでもいい。とりあえず食い物だ。仕方ない、外に出るか。あの角を曲がったところのスーパーはどうなってるのか。落人が品出しとかやってるのかな。大丈夫かよ。でもまあ、品物出すくらいはなんとかなるか。あ、レジはどうなんだ。レジも落ち武者たちがやってるのだろうか。だとしたら、お金は受け取るのだろうか。そういえば、スーパーでレジをやってた同窓生のミヨちゃんはどうしてるかな。無事に逃げられたのだろうか、って、いや、逃げる必要あったのか?逃げなくてもオレなんとか生きてるじゃん。あれ?なんでみんな逃げたんだ?。ってか、オレも最初逃げたからな。そりゃだって、怖いもん。あいつら見た目が怖いんだよ。でも捕まった人いたのかな。捕まったら食われたりとかしたのかな。でも、こっから見る限り死体とかはないけどな。骨までしゃぶったとか!いやあ怖いねえ。やるねえ。完全殺人。そういえば、前のバイト先の工場長はホントにころしてやりたかった。なんだかんだって怒りやがって。体もごついし、あんなので体当たりされたら終わりだよ。それが舌打ちとかするからもうイヤでイヤで。まあ、辞めてやったけど、でもそうしたら金がなくなって困ったもんだ、廃墟YOUTUBEとやらで一攫千金を狙おうと思って廃墟に行ったんだった(※からここまで2秒くらいで頭の中を巡った)。あ、今窓から撮ればいいじゃん。落人が鍋振ってるとこ。そうだそうだ。携帯だって、カメラは使えるわけだからな。よしよし。おっと、なんか見つかりそうだな。いや、見つかったからってなんだ。撮り鉄で鍛えたこの腕で落人を撮るのだ、落ち武者を撮るのだ!。口ケンカなら負けないぞ!。(※)ああ、でもやっぱりアングルがよくない。もうちょっとほら…、ダメだよなあ。やっぱ外出るか。出て撮らないとどうにもならんわ。むしろ「撮りますよ」と声をかければ向こうも悪い気はしないのではないか。こっそり撮るのもなんだか動画の規約違反のような気がする。あいつらにも一応人権というようなモノがあると考えた方がいいよな。いや、でも人なのだろうか。人?人間?国民?…でも、江戸時代の人なんだろたぶん。奈良時代?いやあ、どうかなあ。見た目じゃわかんないよ。ってか、彼らはどっかに肖像権とかで訴えるかな。訴えないか。だったらまあ、勝手に撮ってもいいか。でもまあ、勝手に撮ったの見つかって追っかけられたらどうすんのよ。ってか、追っかけてくるかな。ピースとかするんじゃね?いや、そうじゃない。オレは腹が減ってるんだった。腹が減っては口喧嘩もできぬ。とりあえずスーパーまで行くしかない。よし!出るぞ!(※からここまで0.5秒くらいで)あ、ちょっとまて、マスクはいるよな。マスクマスクと。あれ、マスク切れてるじゃん。昨日してたマスクでもいいか。ってか、それもないじゃん。う~ん、今の世の中、外に出るにはマスクはいるよな。外はいいにしても、スーパーに入るときはマスクがいるだろ。やっぱほら、まわりの人に白い目で見られるし。って、まわりもう落ち武者ばっかりだけどな。なんか元々白目っぽいし。あ、そうか、落ち武者はマスクしてないじゃん。じゃあオレもしなくていいか。マスクしてない人はきっとマスクしてない人に「マスクしろ」とは言わないだろさすがに。じゃあお前もしろよ!って話になるもんな、ってかそういう口喧嘩なら負けない自信はあるしな。よし!行ってみるぞ!。とりあえず落ち武者を避け、落人を避け、と。ぶつからないように、と。目も合わさないように、と。もうずっと下向いてるから難しいが、たぶん今50歩歩いたから、この辺で右折だな。よし!バッチリ!スーパーだ!。…ん?あれ?ミヨちゃんいるじゃん。普通?。ん?通常営業?あれ?どういうこと?。ってか、やばいな。マスクないぞ。これだとスーパー入れないじゃん。なんだよー、こんなに道に落ち武者ばっかりなんだからさ、落ち武者がレジやってると思うじゃん。えーどういうことー!。もしかしてこのスーパーが最後の砦的な?ゾンビ映画言うところのショッピングモールみたいな?ってか、マスクどっかで調達しないとどっちにしてもまずいな。あ、二回ワクチン打ってますから、みたいなことを宣言しながら入っていったらどうだろう?ダメだよなあ。そういうことじゃないわなあ。むしろ大声出して危ない人って思われるわ…。ああ、もうちょっと家の中でマスク探せばよかったか。って、なんかやばいな。オレのまわり、落ち武者増えてきたような気がする…。気づかれたか。ミヨちゃん!こっちに気づいてよ!で、マスク貸して。って、ミヨちゃんはオレのことなんか覚えてないか。彼女はクラスのマドンナ、オレは目立たない鉄ヲタ、もう勝負にならないか。しかも卒業からオレは20キロも太ったし。ってかんなことはどうでもいい。今はこの落ち武者の群れからどう逃げるか、だ。ってか、逃げる必要があるのか?こいつら、そもそも人間に何をするんだ?。こいつらはまず俺を追いかけてこの街まで来て、んで、居着いてるだけだよな。う~むどうしよう。戦うか。逃げるか。…よし、もうこうなったら戦うしかない!。まず、かますぞ!「おい!君たち!一体何者なんだ!」

工場長を撲殺し、ミヨちゃんを人質にスーパーに立てこもった男の供述である。





akuse.jpg

(BGM:Black Moon「Ack Like U Want It (DJ Evil Dee Remix)」from「Diggin' In Dah Vaults」)
→バックトラックが単調とか、薄いとか、そういうラップは好きですね。
ラップが途切れたあたりの、いわゆる普通の曲でいう間奏のあたりが調子っぱずれな音が入っていたりして楽しい。

タイムマシンにお願い


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(創作です念為)


去年のクリスマス、一番の仲良しのミユキからユウジの家でパーティをやるから行かない?と誘いを受けた。
ヒロシ君も来るという。
女性陣も数人いるようで、私はその誘いに乗った。

集まったみんなは大学でいつもつるんでる。
そして私はヒロシ君が好きだった。
彼はみんなに気を配る人で、スマート。
どっちかというと生真面目で、彼女とかって噂も聞かない。
大学には遊びまくってる人もいるけれど、ヒロシ君はそういうタイプじゃない。
だから、彼女はいないようだったけど、逆に告白もしにくい感じもあって。
一番仲のよかったミユキにも彼が好きだってコトは言ってなかった。
けど、気づいてたんじゃないかな、とは思っていた。

ユウジの家は、台所と二間しかないけど、一軒家。
だから多少騒いでも大丈夫。
その晩は盛り上がって。
深夜の2時過ぎになって、雑魚寝しようってことになって。

女の子三人、男の子四人。
まあ、いつものメンバーだし、女の子も3人いるし、と思って、私も酔っ払ってたし、寝ちゃったんだ。

夜中にふと目が覚めたら、ミユキの声が聞こえてきて。
誰か男の子と話してる。
小さな声で。
暗かったからよくわからなかったけど、それがヒロシ君だって気づいて私は全身から血の気が引いた感じがした。

「みんな起きちゃうよ」
「大丈夫だよ」
「でも」
「クリスマスだろ」

二人は抱き合ってるみたいだった。
途中、会話が途切れるのはきっとキスをしてるんだな、って思った。
私は悲しくて気が狂うかと思ったけど、なんか冷静で。
ああ、そういうことか、って思った。

ミユキとヒロシ君のためのクリスマスだったのか。
私は何も気づいてなかったよ。
そっか。
そうか。

そのうち、ミユキの声は途切れがちになって、あえぎ声が漏れてくるようになった。
必死に抑えているんだろうけど、でもやっぱりわかっちゃうものだね。
彼女は今、ヒロシ君の指で愛されているんだ。
クリトリスをなでられて、必死に声をかみ殺している。
ヒロシ君が膝立ちになって、下着を脱ぐ。
大きく勃ったヒロシ君の熱いモノをミユキは口に出し入れしている。

私は、とても悲しいのに、欲情していた。
あそこが濡れてきているのがわかる。
自分の濡れているところを触りたい…。
でも、そんなのみじめだって思うのに、でもどうしても触りたい…。

すると、後ろから手が伸びてきて、私の触って欲しいところに触れた。
私はビックリしたけど、声を出したらミユキとヒロシ君に悪いと思って声を呑んだ。
その手はユウジの手だった。

前からユウジが私に好意を持っていたのはわかっていた。
でも、ヒロシ君が好きだったから、それに気づかないふりをしていた。

そしてわかったんだよね。
これ、ミユキとヒロシ君が考えた、私とユウジをくっつけるためのクリスマスだったんだ、ってことに。
そっか。
なんだ、私だけ何もわかってなかったんだ…。

でも、私はユウジの指に感じてしまっていた。
このまま後ろを向いてしまったら、ユウジと向き合ってしまう。
そうなったら、キスをしなきゃいけないし、私はきっと彼のモノを触ることになる。
セックスもすると思う。
それはきっと「付き合うよ」というサインになる。
それはちょっと違う…、違うけど、どうしても体の欲求に逆らえない自分もいる。
セックスしたい…。
硬いモノを挿れてほしい…。

ミユキはヒロシ君が動かす腰にしっかり腕を巻き付けて必死に声を殺している。
たくさんミユキはヒロシ君に突いてもらってるんだ。
ヒロシ君のは、どのくらい硬くて大きいんだろう。

そんなことを思っていたら、後ろから私を愛撫していたユウジに肩をつかまれて、彼と対面する位置になった。
ユウジは「ずっと好きだった」と私に小声で言い、抱きついてきた。
私はどうしたらいいのかわからなくなってしまって、「ありがとう」って言った。
それがサインになったのか、結局ユウジと私はその晩セックスをした。

果てたあと、ミユキとヒロシ君は一緒の毛布にくるまっている。
私とユウジもそのまま同じ毛布で寝てしまった。

朝起きて、他のみんなが私たち二組のことをはやし立てた。
ミユキとヒロシ君、ユウジは照れまくっていたけど、私はうまく笑えていただろうか。
一晩のウチに、数時間のウチに失恋して、恋人ができたことになっている。
私は頭が追いつかなかった。

でも、セックスに応じたことには後悔した。
初めてではなかったし、遊びのセックスもしたけれど、今回はちょっと違う。
自分の欲望に腹が立ったし、私だけが知らなかった昨晩のみんなの企みに、なにかとても寂しい思いもしたし、ボケッとヒロシ君も来るからってクリスマスパーティに来るなんて言った自分が悔しかった。

その後一年間、私たちは四人でよく出掛けた。
元々仲のよかった四人だから、それは自然の流れだったけど、ミユキとヒロシ君がいちゃついているのを見るのは辛かったし、なによりユウジと手をつないでいる自分をヒロシ君に見られるのが嫌だった。

だから、私、ちょうど一年だったクリスマスの今日、みんなとお別れしようと思う。
去年のクリスマスは後悔のクリスマスだったけど、今年のクリスマスはその後悔の始末を付けるクリスマスにする。
もうこれ以上、ヒロシ君にユウジと私が一緒にいるところを見られるのは辛いし、ユウジとのセックスも、するたびに悲しく後悔するようになっていた。
でも、今さら「ヒロシ君が好きだった」なんて、やっぱり言えないから。
ユウジにだけ「さようなら。私のことは忘れて」ってメールを出して、実家に帰ることにするよ。
幸い、実家はここからは遠い。
みんなも知らない田舎の町だ。
大学には、こそっり昨日、休学届を出した。
少なくとも一年、私はココには帰ってこない。

戻ってくるのは次のクリスマスだ。
きっとその頃には、私のヒロシ君が好きだって気持ちも薄れてるかもしれないし、ヒロシ君はミユキと別れているかもしれない。

去年の今日、私はなんでユウジを受け入れてしまったんだろう。
そう、そのままユウジを好きになればよかった。
いい人なんだし。
でも、私の中には、あの日のヒロシ君がミユキにしていた愛撫をどうしても受けたい、って気持ちがずっと消えなかった。
もし、あの日、ヒロシ君とミユキのセックスを見なかったら、忘れられたかもしれないな、って思ったりする。

恋愛は気持ちだけじゃない。
どうしても私はヒロシ君の硬いモノを受け入れたかったのだ。

まあ、今さらなにを言っても仕方ない。
次のクリスマスには、一年前に戻れますように。


―タイムマシンにお願い。






biihnnma.jpg






(BGM:John Coltrane「Like Someone In Love」from「Lush Life」)
→バラードである。
テナーサックスが歌ってるような、なんだかロマンチックである。

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