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スーパーちんどん・さとう

Author:スーパーちんどん・さとう
ちんどん太鼓担当

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(創作です念為)


それは中学生の時だった。
深夜ラジオを聞くようになり、自分の部屋で夜中まで起きていることが多くなったからだと思う。
それまでは夜中に起きていることなんかなかったから。

それは、向かいの家だ。
向かいの家に、引っ越しのトラックが横付けされていた。
僕の机の前にある窓から隣の家の玄関が見える。
そこに、テレビCMでも流れている、町でもよく見かけるロゴのトラックがいるのだ。
夜中に引っ越しのトラックなどおかしいな、と思ったけれど、その時は「止まってるな」というくらいの気持ちだった。

そして翌朝、トラックはいなかった。
いつものように、学校に行く時、向かいの家のおじいちゃんは玄関を掃いていた。
引っ越しをしたわけではなさそうだった。

思い出してみれば、人が作業をしていた気配もなかった。
音もしなかったし、声も聞こえなかった。
まあ、考えられるのは、夜中にあそこに引っ越し屋さんが駐車していた、という可能性。
どっかに行くのに、時間調整で止めていただけだったのかもしれない。

ま、あまり深くは考えなかった。

その夜、深夜ラジオがCMになってトイレに立った時、ふと窓を見るとまた引っ越しのトラックが前の家の玄関に横付けされている。
今度はよくよく観察してみたが、やはり人が作業している気配はない。
そもそも、隣の家の玄関は空いてない。
運転席はちょうどここからでは見えないが、やっぱりこれは引っ越し屋さんのたまたま駐車だろう。

いや、しかし、こんな細い住宅街の路地が引っ越し屋さんの駐車する場所になっているとはちょっと考えにくいな、と思った。
これ、車が来たらすれ違えないじゃないか。
なんならもっと大きな道で駐車すればいいのに、と思ったが、まあなんか事情があるのかもしれない。

その日もそれ以上は考えずに寝た。

翌朝、いつものように学校のために家を出ると、向かいの家の前にはまだ引っ越しのトラックがいた。
これは運転席を見るチャンスだと思い、ちょっと高い運転席を覗いてみた。

そこには…

隣の家のおじさんとおばさんが前を向いて座っていた。

虚を突かれて、思わず「え?!」と声を出したが、おじさんとおばさんはずっと前を見たままだった。
僕は怖くなって、とにかくなぜかおじさんとおばさんに「気づかれちゃいけない」と思って、隠れるように学校に向かった。

いや、なんなんだ。
どういうことだろう。
見間違ったか。
たまたまおじさんとおばさんに似た人が引っ越し屋さんだった?
いや、引っ越し屋の制服でもないし、いつもの普段着だった。
本当に引っ越しで、一時トラックに乗っていた?
いや、そんなことはないよな…。
それに、窓からのぞいた僕の顔を見もしなかった。
それもなんかおかしいよな…。

家に帰るのはちょっと怖かったが、家の前まで来るとトラックはなかった。
ちょっとほっとした。
もしかして、これはすべて見間違えだったんじゃないか。
そんな気がしてきた。

家に入ると、台所で音がする。
ただいま、と言って台所に入ると、まな板に向かっていたのはおばさんだった。
おばさんは振り返ると「おかえり」と僕に笑顔を向けた。

え?どうして?
ウチのお袋に何かあったの?。
お袋は?
なんでおばさんが家にいるの?

矢継ぎ早に涌いてくる疑問をおばさんにぶつけようとするのだけれど、アタマの中でまとまらず、うまく言葉になってくれない。
おばさんはまな板に向かったまま、「早くお風呂入っちゃいなさい。今日はカレーよ」とかなんとか言ってる。

混乱したまま僕は二階に上がった。

どういうことだ?
ってか、お袋はどうした?

もう一度、僕は一階に降りてみた。
どうしても、確かめなければならない、いや、もうなんかがおかしい。

恐る恐る台所に入ると、そこにはお袋がまな板に向かっている。

え?

「お袋!、どこに行ってたんだよ!おばさんはどうしたんだよ!」
今度は疑問がすらすらと口をついて出てくる。
お袋は僕の尋常じゃない様子を見て、慌てている。
「なに、どうしたの!。ちょっと座りなさい」

僕は、そこで一昨日の夜からのことを一気にお袋に話した。

するとお袋はこう言った。
「落ち着きなさい。」
「お向かいさんはもういないじゃない。」
「おまえが小さい頃、火事を出して…、幸い誰も死んだりはしてないけど」
「その後、お向かいさんは引っ越して、家も取り壊されて、今は草ぼうぼうの空き地になってるじゃない。」

…そうだった。
僕は慌てて玄関を出た。
やっぱりない。
そりゃそうだ。
お向かいが火事になったのは、僕もよく覚えている。
なんで、僕はお向かいさんの家があって当たり前だと思ってたんだ?
コンクリートの塀はあるけれど、家はない…。

納得のいかない気持ちのまま家の玄関に向かうと、背中から視線を感じた。
お向かいさんの塀。
そのコンクリートの空いているところから、おばさんの目がのぞいていた。






(BGM:山崎まさよし「ふたりでPARISに行こう」from「STEREO」)
→「二人でパーティーに行こう」だと思ったら、タイトル見たらパリだった。
この人の声は一回ハマるとハマるよな。
この曲はアコーディオンとドラムレス(だと思う)でパーカッション、アコギ、ベース、という音数をすごい減らした感じがパリ。
編曲って大事よね。
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幼なじみがいたんです


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kaijosha.jpg



(創作です念為)


「幼なじみがいたんですよ」

向かいに座った彼は、二十代後半の青年だ。
深夜のファミレス。
彼は飲み屋さんで働いている。
その飲み屋に客として行ってるウチに仲がよくなった。

今日は、彼が「どうしても聞いてほしい」というので、店が引けた後にここに来た。
どうも「店では話しにくい」話しらしい。


「小さい頃は一緒に遊んだりしていたんですけどね」

彼が住んでいたのは関東の地方都市。
新興住宅地の中で、同い年くらいの子どもがたくさんいたという。
その中でも彼がよく遊んだのがKという男の子だった。
ただ、Kの家は新興住宅地の外れの小山のふもとにあって、昔からの家というか、その新興住宅とは一線を画した感じだったという。


小学校の時はね、クラスが違っても、家が近かったから、よく家に来たり行ったりして、まあ仲良く遊んでいたんですよ。
当時ね、ミクロマンってのが流行っててね。
闘わせたりして遊んでたんだよ。
中学では二人でクイーンにはまってね。
一緒に歌詞カード読んだりして、ああでもないこうでもないとか言い合ってたりしてました。

でも、高校で別々になってしまたんですよね。
彼は頭もよくてね。
いい高校に行ったから。
で、そうなると、やっぱなんか生活リズムが変わるというか、そういうところがあって。
道で会ったら「よお!」なんていうけど、そのくらいの関係になっちゃって。

まあ、なんか元気はないな、とは思ってたんですよ。
勉強について行くのが大変なのかな、とか思ってました。
でもまあ、それでもなんとか高校も出て大学にも行ったらしくて。
東京の大学だって言うから、そこそこ勉強はできてたんだな、と思ってほっとしてたんです。

あ、僕はそのままその町の自動車工場に就職したんですけどね。
そこでまあ、ある先輩が飲み屋をやるって言うんで、一緒に東京に出てきたんです。

なんでまあ、そのまま彼とは会うこともなく過ごしてたんですけど。

ある日、突然、彼がウチの店に来たんです。
なんか、「一緒に住んでる人たち」、と一緒に。
まあ、奇跡の再会じゃないですか。
すごくびっくりしたし、まあ嬉しくてね。
先輩もいいよ、って言ってくれて、一緒に飲んだんです。

その一緒に住んでる人たち、ってのも人当たりがいいというか。
なんか笑顔の人たちで。
今言うシェアハウスの走りですかね。
そういう感じで住んでるらしくて。
三人いたんですけどね。
まあ、彼らとも仲良くなって。
時々飲みにも来てくれたりしてました。

まあ、同郷の人と東京で会うってのは嬉しいもんでね。
懐かしい話とか、ミクロマンで遊んだよな、なんて。


ここで彼が一呼吸置いた。

「再会して半年くらい経った頃かな…」
彼がいなくなったのだという。

え?どういうこと?。
「いわゆる失踪…、ですかね」
途端に彼の言葉は歯切れが悪くなった。


わからないんですよ、よくわかんないんですけどね。
とにかく、彼がいなくなった、帰ってこない、とその仲間の三人から聞いたんです。
一週間ほど帰ってないというんです。

いや、まあ当時彼は大学4年生ですから。
帰ってこないこともあるんじゃないか、彼女でもできたんじゃないか?って。
「そうですよねえ」と、まあその三人もそんなに心配してないんですよ。

まあ、彼女がいるという話は聞いたことがなかったから、それはないとして、としても、就職を控えていろいろ悩みもあって、一人旅してるんじゃないか、とか、実家に戻ってるんじゃないか?って、僕もあまり心配してなかったんですけどね。

で、まあとにかく帰ったら連絡ください、ってその三人にも話しまして。

でも、なんかそのまま連絡がないんですよ。
三ヶ月ほど経っても連絡がない。

ちょっと気になりまして。
まあ、その三人にとっては僕は直接知り合いというわけじゃないし、連絡をするのを忘れたんじゃないかと思って。

「こっちから連絡したんですよ」
そしたらね。
昨日帰ってきた、って言うんです。

「どうだったんですか?何があったんですか?」と聞いたんですが、なんか要領を得ない。
どうも、「何があったか」「どこにいたか」とかについて、この三人は興味がない、という印象を受けたんです。

「彼がそこにいるなら、電話替わってもらえますか?」と言うと、今はコンビニに行ってるというので、Kの携帯に直接メールを入れたんです。

「どこに行ってたんだ」「何してたんだよ」「心配してたんだぞ」「気づいたら電話くれ」

しかし、その日、待っても待っても電話が来ない。
翌日の夕方になって、やっと電話がありましてね。

「よお、久しぶり」なんて言うんです。

「なに言ってんだよ」「どこ行ってたんだよ」と言っても、なんか要領を得ない。
ま、僕は夜の仕事ですからね。
ちょっとすぐに会いに行くことはできない。
とにかく飲みに来い、と。
顔見せろ、と言って、店の準備もあったので、その日は電話を切ったんです。

で、数日後ですかね。
その三人と一緒にKが飲みに来まして。
「何やってたんだ!」と僕は思わず怒っちゃいました。

でも、なんかその僕の怒りを逆なでするかのように、この四人、まったくこの件に触れようとしない。
なんか、「彼がいなくなった」と言うことが「なかった」感じなんですよ。
そこでまあ、なんか押せなくて。

ハッキリしたことはわからないんですが、断片をつなぎ合わせると、とにかくどこかの山に行っていた、みたいな。
その感じは、「おまえに言ってもわからない」という感じもして、僕はとても腹が立ちましてね。
心配してた、ってのもなんかもう馬鹿らしくなってしまって。

でも、なんか妙なんですよ。
ほら、ウチの店、カウンターと4人掛けの椅子席が4つあるだけの小さい店でしょ。
まあ、カウンターの中にいると全部見渡せる。
仕事しながらなんとなく彼らを見てるとね、なんか不自然なんですよ。

なんていうかな。
普通、4人組みたいな感じで飲みに来たお客さんというのは、一人がメインで喋るというか、中に一人くらいは酔っ払っちゃったりなのか、よくは聞いてないけど聞き役、みたいな人がいるというか。
4人が話に集中するってのは、最初のウチだけなんですよね。
そのうち、バラバラに話が始まったりするもんなんです。
ちょっと怒ったり、誰かの悪口とか、そういうので眉をひそめて話すとか、そういうのがあるもんでしょ。

最初に会ったときは彼らの笑顔はウエルカムだったのかな、とも思ったんですが、あの感じがずっとなんですよ。
基本笑顔というか。

で、なんか彼らは常に4人一緒、というか、一緒に話し、一緒に笑う。
…まあ、悪いことじゃないし、仲がいいのかな、くらいの感じかと思うんですが、いや、なんかね、統一感があるというか…。
タバコに火を付けるタイミングも一緒なんですよ…。
まあ、今時、4人いて、4人がタバコを吸うってのも珍しいんですけど…。

なんか逆にちょっとぞっとしまして。
まあ、他の三人については名前くらいしか知らないし、そもそも同じ大学なのかどうかもよくわからなかった、ってことをその時気づきましたけど。


で、その一ヶ月くらい後かな、ある日、その三人がやって来てね。
Kはどうしたんですか?って聞くと、またいなくなったと言うんです。

え?どうして?なんで知らせてくれないんだ!と思いましたけど、なんかねえ、彼ら普通なんですよ。
心配している様子がない。
しかもその三人はよく知りませんから。
問い詰めることもできないというか、問い詰めるこっちを遮断するオーラがあるというか。

それでまた三人で一緒に話し、一緒に飲んで笑ってるというか…。
こりゃなんかおかしいぞ、って。

だって、大学も終わりというか、肌寒くなる頃だったですから。
就職活動とかそういうのもあるじゃないですか。
「あなたたちは心配しないんですか?!」と多少声を荒げて言ったんですけど、なんか三人そろってキョトンとしてる感じなんですよ。
「あ、そうですよねえ」なんて言って、でもまたそのまま一緒に話しが始まって…。


もうこりゃダメだと思ってね。
休みをもらって、彼の実家に行ったんです。
何か手がかりがないかと思って。
まあ、僕もついでに親に顔見せようと思って。

そしたらね、彼の家がね。

「ないんですよ」

取り壊したとかじゃなくて、小山のふもとにあったはずの彼の家があった場所。
それが、なんか、もう小山の一部になってる。
いや、僕がここを離れてまだ数年ですよ。
小山にある雑木林の一部になってる。
たとえ、取り壊されたとして、ここまで小山に浸食されてしまうモノか…と。

愕然としましてね。

母親にKの家のことをたずねたんですけど、「そんな家あったっけ?」と言い出すんです。
「小さい頃によく遊びに来てたじゃないか、Kだよ!K!」というんだけど、思い出せない、という。
いや、確かにウチは当時共働きだったし、Kがウチに来てたときに母親がいなかったこともあったけど、まったく覚えがないってのはおかしいですよね。

でもね、親とそうやって押し問答してる間に、僕もちょっとわからなくなってることに気づきまして。
彼の家にも行った記憶はある。
けれども、彼の家の中の記憶がないんです。
彼の親の顔も忘れてしまっている。
時々アイスをもらったりしたような気がするんですけど、まったく顔が思い出せない。

あれ?おかしいな、と思いまして。

思い出そうとするんだけど、思い出せない。
何かが邪魔をしてるような感じがある。


そこでね、あ、卒業アルバムだ!、と思いまして。
見たんですけど。

「いるんですよ」

いるんです、K。
…でもね、なんか、わかんなくなっちゃって。
そのKの顔見てたらね。
なんか全部幻だったんじゃないか、って思えてきて。
だって、Kの家があった場所はその痕跡はない。
なのに、Kだけがいるって、なんかもう、わかんないですよ…。
そもそもどっから通ってきてたっていうのか…。


その後のKですか?
そのまま戻った、って話しは聞いてません。
三人は時々飲みに来るんですけど、聞きはぐってしまっていて…。
向こうからは帰ったって話しはしてきません。

だから、もうKは今は音信不通ですね。
どこかで元気に生きていてほしいと思うんですけど、なんか、小さい頃の記憶も、再会の記憶も、なんかどうでもよくなってきちゃって。
そうしたら、Kの顔もなんか思い出そうとするんだけど、思い出せないというか…。
割れた鏡に写った顔みたいな、そんな感じにしか思い出せなくなってきて。


でね、なんか次は僕のような気がするんですよ。
最近、なんかあの三人と話が合うようになっちゃって…。
どこの誰かも知らないのに。

佐藤さんも、一度くらい彼らと遭遇してるときがあったと思うんですよ。
あの変な三人組です。
全員めがねの。

だから、もし、僕がいなくなったら、あの三人を絞り上げてください。
どこに僕が行ったか、彼らは必ず知ってる気がするんです。


「なんか、今のうちに誰かに話しておかないと、手遅れになる気がして…。」


彼はそこまで言うと、タバコに火を付けた。
「アレ?吸わないんじゃなかったっけ」とオレが聞くと、彼はこう言った。

「あ、そうですね…。」
僕、いつの間にタバコを吸うようになったんでしょう?






車募集

(BGM:Harry Belafonte「Danny Boy」from「My Favorite Songs」)
→名曲をすごく歌い上げてくれる。
ステレオなんだけど、モノラルにも聞こえる、というか、すげえ耳元で歌われてる感じすらある。

そうだったのか (創作)


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(創作です念為)


女房が死んだ。
葬式が終わって、亡骸はこんなに小さな骨壺に収まってしまった。

彼女とは仕事場で知り合って、1年くらい付き合って結婚した。
子どもはもう成人して、家を出ている。
数年前から彼女はパートに出ていて、遅れた共稼ぎ夫婦になった。

子どもがいないということで、パートの交代や夜遅くの時もあって、すれ違いは多くなったが、私は台所に入らないタイプじゃないし、そんなに不便はなかった。

そんな折、パート先からの帰り道、自転車の彼女は大型のダンプに巻き込まれた。
病院に担ぎ込まれたときにはもう死んでいた。

大型ダンプの運転手はそれはもうこっちが恐縮するほど小さくなって、何度も何度も床に額を擦り付けた。
最初のウチは腹も立ったが、毎日そんなことをされているウチに、許してやろうという気にもなった。

私は仕事を辞めた。
もう働く必要もない気がした。
この家のローンも払い終わっている。
どのみち、あと5年で定年だ。
早期退職者を募っている会社の方針もあり、私は手を上げた。

近くの墓所に墓を買おうと思っているのだが、まだ動き出せていない。
大きな穴が自分の中にできてしまったようで、何をするにももうちょっと時間が必要な気がする。
彼女が骨壺に収まって半年が経つ。
早く決めてやらねば、と思いながら、毎日骨壺の前に座っている。

思えば、専業主婦にしてしまったことも彼女にとってどうだったんだろう。
仕事を続けたかったのじゃないだろうか。
息子が出て行って、パートを始めたのも、続けたかったからじゃないだろうか。

いつだって、疲れて帰ってきても、彼女はいつも笑顔で食事を用意して待っていてくれた。
子どもPTA、近所の自治会のことも積極的に参加してくれていた。
よくできた女房だったと思う。

けれど、彼女にとって、オレはいい夫だったのだろうか。

子どもが大学に行って時間ができると、よく夫婦で旅行にも行ったっけ。
あれはどこだったか、見晴らしのいい海岸を望む高台で年甲斐もなくキスをしたっけ。

よかった想い出だけが次々に蘇ってくる。
そして、彼女の骨壺に語り続ける。
「オレはいい夫だったか?」と。

そして、ふと思い出したんだ。
パートに出るようになって半年くらいしてからだったか。
彼女が遅くなる日が続くようになったことがあった。
思えば、家にいるときもいつも携帯をいじっていた気がする。

そうだ、彼女の携帯…。
警察から戻ってきたけれど、そのまま手つかずだった遺品の中にあったはずだ。

彼女の携帯には、一緒に行った観光地のストラップがついていた記憶があるが、事故の衝撃かなくなっていた。
充電コードを差し込んで携帯を起動する。

写真を開けてみたら、そこには知らない男が写っていた。
食事に行ったと思われるシーン、自撮りをしたのだろうか、彼女の顔はアップだ。
数枚先には、どうみても男と一緒にはだけた肩を出して布団に入っている彼女がいた。

どういうことだ…。
言葉もない。
年甲斐もなく、彼女は不倫をしていたのか…。

メールを開けてみたら、濃厚な恋人のような会話が綴られている。
「あなたと今会いたい」
「離婚してあなたと再婚したいわ」
「若いときにあなたと出会いたかった」

最後のメールには「さっきはありがとう、楽しかったね」という文字とともにハートが踊っていた。
それは、警察に知らされた事故発生時刻の数分前だった。

そうか。
そうか…。

不思議と私は冷静だった。
怒りがわいてくることもない。
心には凪。
感情がどこにも吹いていかない。

その相手は彼女のパート先の同年代の男だった。
そういえば、私も一度くらい会った気がする。

そうか。
そうだったのか。

翌朝、私は、女房がパートをしていた小さな設計事務所をたずねた。
数人の社員と、その男がいた。
ざわめく事務所内。
私が亡くなった女房の旦那だと言うことは、葬式にみんな来てくれたから知っている。

「どうしたんですか?」という声をよそに、私は、無言で骨壺を抱いたまま、彼と相対した。

「女房はあなたと一緒になりたかったそうです」
「ぜひ、最後は、一緒になってやってください」
「ここに彼女、置いていきます」

事務所は静まりかえった。
彼のデスクに骨壺を置いて、私は背を向けた。

ごめんな。
いい夫じゃなくて。

でもこれで、おまえの最後の願いは叶えてやれたか。
最後くらいは、おまえの望みを叶えたい。

帰り道、真っ黒な闇の中に、自分はいた。
心には凪。
何の感情もなくなっていた。

これですべて終わった。
私のこれからの人生は、彼女と生きてきた30年分の自分の後悔を、真っ黒な闇に放り込むことに費やそうと思う。








書店員

車募集


(BGM:Jennifer Lopez「I'm Real」from「J.Lo」)
→YMOのファイヤクラッカーを大胆にもってきたなあ、これ。
マーティンデニーが原曲となるわけですが、これはYMOバージョンを持ってきてますな。

行きたい気持ち (創作)


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(創作です念為)

彼女は、空港で降りて、タクシーに乗ったという。
以下はその時の彼女の話である。

出張先の支店は電車が通ってる場所じゃなく、山の中にある。
簡単な確認作業なので、おそらくはすぐに仕事は済むだろうが、行きようがない。
レンタカーという選択肢もなくはなかったが、慣れない山道の運転は避けたかった。

タクシーに乗り込み、行き先を告げると、「わかりました~」と女性の運転手さん。
運転手さんが女性であったことになにやら居心地の良さを感じ、安心して確認作業のための書類に目を通すことにした。

ふと視線を感じて、バックミラーを見ると、運転手さんが何度も私のことを見ている。
あら?お化粧落ちちゃったかしら、とか思っていると、急に運転手さんが涙声で私に声をかけた。

「ごめんなさいね!あのとき!」

え?

「あのとき、あなたを脅かすだけのはずだったの!。ごめんなさい!」と、もうその運転手は泣き声である。

違うのよ、私は、命令されただけなの!
あそこに呼び出せって言われたから、あなたに電話しただけなの。
あんなことになるなんて、私、思わなかったから…。

私はまったく心当たりがない。
というか、この運転手さんのこと知らない…。
「違いますよ。人違いです」と私は言ったが、その声が聞こえているのか聞こえていないのか、彼女はごめんなさいを繰り返す。

私はそれよりも山道の運転の方が気になってしまい、「とにかく落ち着いてください、人違いですから」と言うも、彼女は本当に私におびえているように見えた。

そもそもこの地に来たのは始めてだ。
彼女の話を総合すると、どうも高校時代くらいの時の話をしているようだ。
とはいえ、彼女は私よりもどう見ても年上に見えるし、ネームプレートの「根岸」という名前にもまったく心当たりがない。

「違いますよ。私、ここに来たのは初めてだから」というんだけど、彼女は「そうじゃない、そうじゃないじゃない。ほら、あのときに…」と私の人違いについてはまったく意に介さない感じである。

そうか、よく考えたら、この場所での話じゃないかもしれない。
この人だって、ここで高校時代を過ごしていると決まったわけじゃない。

けど、言ってることがまったく不明だ。
しかも、なんか彼女は核心を言わない。

一転して居心地が悪い空間となったタクシーだが、目的地には着いて、「ごめんなさい、もうお金はいいから」と運転手さんは言って私を降ろそうとする。
違う違う、私、その人じゃないから。
と料金を払おうとするのに、彼女はそれを受け取らない。
このまま押し問答してもしょうがないと思った私は、まあ、いいかと思ってタクシーを降りた。

なんだろう。
なにを言ってるんだろう。
誰と勘違いしているんだろう、って、なんか解せない思いはあったけれど、でもまあ、彼女ともう出会うこともあるまい、気を取り直して仕事を済ませちゃおう、と私は思った。

仕事は滞りなく終わった。
この後、近くの駅まで出て、主要都市にあるお城を見て帰ろうと思っていた。
近くの駅まで送りますよ、という支社長の言葉に甘えることにした。

支社の玄関で待っていると、私より若そうな男性が仕事のついでがあるので送ってくれるという。
ちょっと進んだところで、急に彼は私に言った。
「おまえ、根岸だな」
「なんで戻ってきた」
「あの後、みんなで大変だったんだぞ!」

え?

いや、違います、私は根岸じゃないです。
この場所に来たのも初めてです、と繰り返すのだが、聞こえてるのか聞こえてないのか彼は私を責め続ける。

「あの場所におまえが着さえしなかったら、こんなことにならなかった」
「また戻ってきて、同じことをするつもりか!」

私はハンドルを彼に握られていることもあって、恐怖に駆られた。
この怒りようだと、私はどこかに連れて行かれてしまうのではないか、そうではなくても、山道の運転を誤ってしまうのではないか。

落ち着いてください、私は根岸じゃないんです。
人違いです。

彼はそれでも近くの駅で私を放り出すように降ろすと去って行った。

行きのタクシーのこともあり、私の頭の中はパニックになった。
根岸を巡る何かがあったんだろうか。
根岸って、行きのタクシーの運転手さんだよな…。
でも、彼女と私は似てない、と思う。
というか、年齢が違いすぎるし、そう考えると、支社から運転してくれた彼はもっと若い。

彼らは同じ事例について私に言っていたように思えるが、どうも高校時代くらいの話をしているようで、こんなに年齢が違って同じような話をするとはちょっと思えない。

なんなんだろう…。
私は、なんか早く帰った方がいいような気がしたが、一方で、根岸にまつわる何があったのか、どうしても気になってしまった。

駅前で呆然としていると、小さな子どもがやってきて、「はい、頼まれてたコーラ」といって私にペットボトルを渡してくる。
唖然としていると、向こうからおじさんがやってきて、「やあ、根岸さん、久しぶり!」と手を振りながらやってきた。

え?だから私、根岸じゃないって!

近づいてくるおじさんをつい突き飛ばしてしまった。
「なにするの、根岸さん」とおじさんは笑顔。
恐ろしくなった私は、とにかくこの場から離れようと走った。

整理しようと思っても、整理できない。
最初の根岸さんが彼らの言う根岸さんなのだろうか?
でも、私とは似ても似つかないし、年齢も明らかに違う。

というか、なに?なんなの?と思っていると、ブルブルブルと携帯が鳴る。
おばさんからだ。
開口一番、おばさんはこういった。
「あんたどこに行ってんの!」
「なにしてんの!」
「そんな山に行っちゃダメじゃない!」
おばさんにはここ2,3年会ってないし、今日のことも伝えてない。
うろたえていると、「すぐにウチに戻りなさい!」と続ける。

これは後になって聞いた話だけれど、おばさんはテレビを見ていたら急に画面が切り替わって見えて、私が山の中で多くの人に囲まれて崖から落とされる様子が写ったらしい。
その山がどうも禍々しく、何か悪い予感を感じさせ、すぐに電話をかけてくれたらしい。

おばさんの勢いに押され、「わかった」と言い、私は駅に戻り、でも誰とも目を合わせないよう、ターミナル駅を目指したのよ。


ここまで話し、彼女は一息ついて、こう言った。

根岸、って、その時にはもう亡くなってた母親の旧姓だったの。
でも、あの場所は実家とかでもないし、関係ないと思うんだけど。
けど、なにかつながりがあるんじゃないかと思うとね、どうしてももう一度行ってみたい気持ちが抑えられないのよね…。
でも、次に行ったら、なんかおばさんが見た映像が本当になっちゃうような気もして、怖いんだけど…。
けど、行きたい気持ちが抑えられないのよ…。

行かない方がいいよねえ…

と彼女は最後に小さな声で自分に言い聞かせるように言った。





車募集

書店員


(BGM:Sublime「Don't Push [Live]」from「Stand By Your Van [Live]」)
→ジャケットの見た感じはパンクなんだけど、スカからレゲまで、まあ「楽しい」音楽だな、これは。
ライブ盤で、まあライブの曲順通りに入ってるのかどうかは知らないけど、一曲目がこの「Don't Push」ってのがね、いいよね。
「押すなよ、危ねえぞ」みたいな。
見た目に違わず優しいと見た。

形見 (創作)


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(創作です念為)


「あの映画監督のところでちょっと働いていたことがあったんですよ」
え~、あの賞を取った監督?
「そうなんですよ、まだ有名じゃなかったけど、やっぱ小道具とかにはすごく気を遣う人でしたね」

「あの画家さんと知り合いなんですよ」
すごいね、有名な人じゃない。
「何回かアトリエにもお邪魔したことがあって…」

彼女は、わかりやすい嘘をいつもついていた。
その独特な風貌、ちょっと服も周りから浮く感じの「普通の人じゃない感」を醸し出していた彼女の話は、それでも最初はみんな興味津々に聞いていたが、それが毎日のように続く中で、だんだん「またかよ…」という雰囲気が支配するようになった。
それでも仕事は進んだし、話をへえへえ聞いていればいいじゃん、という感じが彼女をのまわりを支配し始めていた。
嘘だ、と突っ込むのは大人としてどうか、ってのもあって、決定的な出来事は起こらなかったが、今になって考えてみると、それが彼女を追い込んだのかもしれない。

だんだんみんなが驚かなくなるに従って、彼女の嘘もエスカレートしていくのはみんな感じていた。
このままでは、「マイケルジャクソンと友達」、といいかねないな、と誰もが思っていたけれど、まともに取り合うのもめんどくさい。

そんなある日、彼女は盛大に吐いた。
デスクにだ。
周りは驚いたし、彼女の体調を気遣った。
彼女をソファに横にならせ、吐瀉物を片付けた。
「ちょっと寝てれば大丈夫だと思います。すいません本当に」という彼女でしたが、その日は早く帰って寝た方がいいという皆のアドバイスを受けて、彼女はそのまま帰った。

どうしちゃったんだろう。
みんな不安になったけれど、まあ彼女の言うように明日にはけろっとしているのかもしれない。
突然のことに戸惑ったが、まあみな仕事を終え、その日は帰った。

翌日、彼女はちょっと遅れてやってきて、「どうも私妊娠したみたいです」と言った。

おめでとう、とみんなは言った。
昨日の出来事が吹っ飛ぶような話だったけれど、どうも「相手が誰なのか」を彼女は言わない。
そういえば、そういう「彼氏」的な話を彼女から聞いたことはなかったなあ、と思ったけれど、でもそこで「相手は誰なの?」というのはちょっと聞きにくい。
結婚は?というのもちょっと野暮な感じがして、それはみんなも同じだったようで、誰もそれには触れない、ただ「おめでとう」を彼女に送った。

その後、彼女は休みがちになった。
きっとお産がきついのかな、と話していたが、時たま顔を出すと、その顔が妙にこけているのに気づいた。
新しい命を生み出す力が出るんだろうか?
そんなにきついのかな、と思っていたけれど、ある日、連絡なしに休んだのが二日続いて、なんか家を見に行った方がいいんじゃないか、という話が出た頃、彼女の母親という人から連絡があった。

「彼女、死んじゃったって」
電話に出た女の子がそういった。

え?
どういうこと?
なに?

所長が改めて控えてあった実家に電話をかけると、彼女の母親は平謝りだったそうで、ご迷惑をかけて、と繰り返す。
状況が飲み込めない所長が、「おなかの子は…」と遠慮気味に聞くと、母親なる人物はこういった。

「またそんなウソを…あの子は…もうしわけありません…」

狐につままれたような顔をしている所長の話を聞いて、そうか、妊娠というのはウソだったのか、何か別の病気?だったのか…、と思ったが、所長も死因は聞けなかったという。

二三日は仕事も手につかない感じだったが、そのうち彼女なしの事務所で仕事を回すようになり、彼女の荷物を片付けよう、ということになった。
新たに人も募集しなければならない、そのためには整理もしなければならない。
まあ気は進まないが、母親もこっちで片付けてくれと言うし、仕事と割り切って手の空いた人で整理を進めることになった。

なんということはない。
デスクの上には書類、机の中にも筆記具やメモ、特に仕事上必要とするモノはなかったし、私物というのも、ペン類くらいで、整理ははかどった。

そんな整理の最中、ロッカールームから女性の社員が血相を変えて抱えてきたのが「こけし」だった。

一抱えもある。

彼女のロッカーに入っていたという。

え?
どうして?
なにこれ?

こんな大きなモノを持ち込んだら気がつきそうなもんだが、そういうそぶりはなかったし、どっかのお土産とかそういう感じでもない。
そのこけしは、作りはいいようだが、うす汚れていて、古いものであることがうかがわれた。

黙り込んだ事務所だったが、所長が、「明日燃えないゴミの日だから、出しちゃおう」と言い出した。

そうだよな、別にもう彼女の持ち物はゴミにしちゃってるわけだし…。
こんなに大きければ燃えるゴミというわけにも…。
かといって、寺に持って行くとか、祈祷してもらうとかはなんか逆に怖い…。

ただ、彼女はここに置いていただけだ。
だから、捨ててもいいんだ、という風に、

考えたかった。


結局、所長の意見に異議を唱える人もいず、こけしは会社の入り口のゴミ置き場に置かれた。
明日になれば、回収車が回収してくれるだろう…。


翌朝、会社に行くと、みんな真っ青な顔をしていた。
どうしたんですか?と聞くと、ゴミ置き場を見ろという。

こけしに、誰が貼ったのか、どこのものだからわからないお札が貼ってあった。

事務所の誰も貼った覚えはないという。





(BGM:ガガガSP「フラレ男の哀しい歌」from「声に出すと赤っ恥」)
→もうストレートなタイトルであることがガガガらしい。
これ、タイトルだけでけっこう「ケッ」って思うかもしれないけど、サビもタイトルまんまなんだけど、3分弱の曲の中で繰り返されるとちょっとグッときちゃうところもある。

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