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スーパーちんどん・さとう

Author:スーパーちんどん・さとう
ちんどん太鼓担当

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「のの」じゃねえわ


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まあ、機関紙ね。
虹の会で毎月出していますけど、まあ紙媒体なので、ぜひ紙媒体で手に入れていただきたいんだけれど。
にじ屋で配布しているし、あとはツイッターのDMとかくれたら郵送します。
毎月読みたいとなったら、会費払ってくれるとありがたい、という仕組みであります。

10月号は先日郵送を終えたところだけれど、その中から、テキストで引っ張ってこれるモノで、ちょっと感動した記事を紹介します。


それはスズが書いたモノ。
これは、「カイと仕事をする」ということについて書きます、ということだったんだけれど、これが傑作で、編集しながら泣いた。
以下。


カイさんとは、ここ半年くらい?だろうか。月曜にやる服の仕分け作業を一緒にやる。

カイさんに服の入った袋やダンボールを持ってもらい、その間私が服を仕分ける、という流れが基本。合間にゴミ捨てを頼んだり、服についてるビニール袋を剥いでもらったりもする。

一緒にやり始めた頃は、そもそもカイさんとは距離感を測りあぐねていて、二人で仕事なんてしたことが無かった。カイさんには私では話が通じない、という感覚が強かった。カイさんと関わることにとても緊張した。私が呼びかけてもスルー、みたいな事が多かったし、きっとカイさんも、そんな私の様子を良く見ていたんだと思うし、カイさんからしても、「コイツは話がわからない奴だ」となっていたんだと思う。それに、仕分けのたびに「今回はどうなるかな…」と緊張していたから、それを見抜かれていたんだろうな。

やっぱり、そんな気配のする人とは仕事はしづらいだろうし、
なにより私の位置は「新しく来たやつ」という、歯牙にもかけられない立ち位置から始まっていたわけなので、そりゃあフラフラしたくもなる。

仕分け中フラフラ離れていって戻ってこなかったり、急にイラ付き初めて私が焦ったり、今度は微動だにしなくなって(結構天気によって調子が悪かったりする)、無理に軌道修正しようとして逆にカイさんに噛まれたりもした。多分このとき噛まれたのが初めてだった思う。

いろんな人の話から、噛むってことは相手を認識してるってことだ、というのは聞いていた。
つまり仲良くなっていけばいつか噛まれるということか、と思っていたので、噛まれて落ち込むとかよりは
「私の事認識してた?!」と嬉しくなった。
しかも噛まれたあとに、噛んだ私の手を持って、噛み跡をゴシゴシさする様に触ってきたので、
「噛んだら痛いよカイさん。」というと
「あぅ。」と小さくだけど返事が返ってきて、雰囲気だけど
「やっちまった…」と言ってきたように思った。
それがちょっとおかしくて、
思わず「そんな事なら最初から噛まなきゃいいでしょうよ」と返した。
そこを機に、カイさんとの関係を諦めてなるものか、と火がついたし、同時に色々構えていたものがちょっと楽になった。

その後も一緒に服の仕分けは続けていき、少しずつ私の呼びかけとか、お願いしたことを聞いて反応してくれるようになっていった。
カイさんはとても仕事ができる人で、これはこう分けてるな、とかよく見て予測して動いたりする。
いつぞやは着物が出てきたとき、「雑貨」の箱に仕分けるものだったけれど、カイさんは
違う作業をしてる方にあった「着物」の箱にいれようと一人で置きに行こうとした。
合っているといえばそうだけど私と仕事してるときは「雑貨」の方に入れてほしい、というのでやっていたので阻止。
抵抗していたけれど、「こっちに置いて」と言うのを呼び掛けていたら暫くして分かってくれて、私に渡してくれた。

そのあと、「着物の方に置こうと思ったんだよね?ありがと。でも今回はこっちにおいていいんだよ。」と声をかけると、ジッと見つめてきたので多分通じたと思う。
その後の仕事も苛ついたりもなく、一緒にやってくれたが更に嬉しかった。

そしてつい一月前位のこと。
確かにじ屋のあと、ネットで私がパソコン作業をしていた時だったと思う。
後ろで「あう!あ!あう!」としきりに声がするので振り向くと、こちらを見つめてテーブルの上のヤカンを指差し、
「あう!」と何かを訴えかけてくるカイさんが。

「なに?お茶飲むの?注いでほしいの?」
と聞くと「あう」といって自分のお腹を指すカイさん。
これまでカイさんから話しかけてきたのはコダワリで何か気に食わない、という時が殆どだったので、
普通に「ねえねえ」という感じで言ってきたことにびっくりした。

外口さんがよくカイさんのお腹を触って腹話術のように喋る練習、というか遊んでいるのをよく見かけていたので、
もしかしてお腹を押せってこと?と思い「おーちゃっ(お茶)」と一緒にお腹を押しながら喋ると、満足したのかスッと自分で注いでお茶を飲む。
いや注いでほしいんじゃなかったんかい、と思ったけれど、
そのあと何故か内藤さんや佐藤さんにも水筒のお茶を欲しいと言いに行っていて、お茶が飲みたいんじゃないのか…?とちょっと気になった。
そのときに「言って通じるのが楽しいんだろうな」と話していたのを聞いて、なるほど、とちょっと衝撃だった。確かに喋れないカイさんからしたら「言いたい事が通じる」って言うのはとても嬉しいだろうな。それをやりたいがために色んな人に言う、ということだったのか、と思った。

その後も何かしらで「お腹触れ」と主張してくることが増えて、仕事中戻ってこない、なんて事が減ってきた。
仕事中トイレやお茶を飲みにいく時には一声かけてくれる事が増えたし、これまでは通じなかった「これでお茶最後だよ」とか、「今日はもうコレは終わり」というのが通じるようになってきた。(音楽つけてとか、ヤカン空だからたして、とかをよく頼まれる)

私にとってカイさんが「話が通じない人」でなくなったのと同じように、カイさんも「コイツは話せば通じる」と言うふうに思い始めてくれた事がとても嬉しい。自分がカイさんの「言うに足る人」になれてきている事が自信にもなる。
そういう風に思わせてくれるカイさんは凄い人だな、と感じる。そんな風に向き合うきっかけをくれた事がとても有り難いし、それを裏切らない人でありたいなと思う。


これ、ファイルのタイトルがついてるんだけど「カイさんと服のの仕分け○すず」ってなってて、「のの」じゃねえよ、と思ったけど、ま、そういうところがスズのいいところ。
この辺は http://superchingdong.blog70.fc2.com/blog-entry-5333.html にも書いた。

そもそも彼女は、二三年前?もっと前?に、加納さんの介助者から「引きこもってる妹なんだけど、面接してくれないか」、ということでやってきたんだけど、いや、もうなんか、すげえわ、この子。
まだ二十歳そこそこなんだよな。

今の日本は、有能な人材を引きこもらせているということをもうちょっと真剣に考えたほうがいい気がする。

suzu1111.jpg










(BGM:シャネルズ「シャマラマ・ディン・ドン」from「Mr. ブラック」)
→こうしたスタンダートをしっかりやってる人たちだったんだよね。
好きだったんだろな、ドゥーワップ。
ここまでやってくれると、まあ納得だよ。
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引っ越しのトラック


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(創作です念為)


それは中学生の時だった。
深夜ラジオを聞くようになり、自分の部屋で夜中まで起きていることが多くなったからだと思う。
それまでは夜中に起きていることなんかなかったから。

それは、向かいの家だ。
向かいの家に、引っ越しのトラックが横付けされていた。
僕の机の前にある窓から隣の家の玄関が見える。
そこに、テレビCMでも流れている、町でもよく見かけるロゴのトラックがいるのだ。
夜中に引っ越しのトラックなどおかしいな、と思ったけれど、その時は「止まってるな」というくらいの気持ちだった。

そして翌朝、トラックはいなかった。
いつものように、学校に行く時、向かいの家のおじいちゃんは玄関を掃いていた。
引っ越しをしたわけではなさそうだった。

思い出してみれば、人が作業をしていた気配もなかった。
音もしなかったし、声も聞こえなかった。
まあ、考えられるのは、夜中にあそこに引っ越し屋さんが駐車していた、という可能性。
どっかに行くのに、時間調整で止めていただけだったのかもしれない。

ま、あまり深くは考えなかった。

その夜、深夜ラジオがCMになってトイレに立った時、ふと窓を見るとまた引っ越しのトラックが前の家の玄関に横付けされている。
今度はよくよく観察してみたが、やはり人が作業している気配はない。
そもそも、隣の家の玄関は空いてない。
運転席はちょうどここからでは見えないが、やっぱりこれは引っ越し屋さんのたまたま駐車だろう。

いや、しかし、こんな細い住宅街の路地が引っ越し屋さんの駐車する場所になっているとはちょっと考えにくいな、と思った。
これ、車が来たらすれ違えないじゃないか。
なんならもっと大きな道で駐車すればいいのに、と思ったが、まあなんか事情があるのかもしれない。

その日もそれ以上は考えずに寝た。

翌朝、いつものように学校のために家を出ると、向かいの家の前にはまだ引っ越しのトラックがいた。
これは運転席を見るチャンスだと思い、ちょっと高い運転席を覗いてみた。

そこには…

隣の家のおじさんとおばさんが前を向いて座っていた。

虚を突かれて、思わず「え?!」と声を出したが、おじさんとおばさんはずっと前を見たままだった。
僕は怖くなって、とにかくなぜかおじさんとおばさんに「気づかれちゃいけない」と思って、隠れるように学校に向かった。

いや、なんなんだ。
どういうことだろう。
見間違ったか。
たまたまおじさんとおばさんに似た人が引っ越し屋さんだった?
いや、引っ越し屋の制服でもないし、いつもの普段着だった。
本当に引っ越しで、一時トラックに乗っていた?
いや、そんなことはないよな…。
それに、窓からのぞいた僕の顔を見もしなかった。
それもなんかおかしいよな…。

家に帰るのはちょっと怖かったが、家の前まで来るとトラックはなかった。
ちょっとほっとした。
もしかして、これはすべて見間違えだったんじゃないか。
そんな気がしてきた。

家に入ると、台所で音がする。
ただいま、と言って台所に入ると、まな板に向かっていたのはおばさんだった。
おばさんは振り返ると「おかえり」と僕に笑顔を向けた。

え?どうして?
ウチのお袋に何かあったの?。
お袋は?
なんでおばさんが家にいるの?

矢継ぎ早に涌いてくる疑問をおばさんにぶつけようとするのだけれど、アタマの中でまとまらず、うまく言葉になってくれない。
おばさんはまな板に向かったまま、「早くお風呂入っちゃいなさい。今日はカレーよ」とかなんとか言ってる。

混乱したまま僕は二階に上がった。

どういうことだ?
ってか、お袋はどうした?

もう一度、僕は一階に降りてみた。
どうしても、確かめなければならない、いや、もうなんかがおかしい。

恐る恐る台所に入ると、そこにはお袋がまな板に向かっている。

え?

「お袋!、どこに行ってたんだよ!おばさんはどうしたんだよ!」
今度は疑問がすらすらと口をついて出てくる。
お袋は僕の尋常じゃない様子を見て、慌てている。
「なに、どうしたの!。ちょっと座りなさい」

僕は、そこで一昨日の夜からのことを一気にお袋に話した。

するとお袋はこう言った。
「落ち着きなさい。」
「お向かいさんはもういないじゃない。」
「おまえが小さい頃、火事を出して…、幸い誰も死んだりはしてないけど」
「その後、お向かいさんは引っ越して、家も取り壊されて、今は草ぼうぼうの空き地になってるじゃない。」

…そうだった。
僕は慌てて玄関を出た。
やっぱりない。
そりゃそうだ。
お向かいが火事になったのは、僕もよく覚えている。
なんで、僕はお向かいさんの家があって当たり前だと思ってたんだ?
コンクリートの塀はあるけれど、家はない…。

納得のいかない気持ちのまま家の玄関に向かうと、背中から視線を感じた。
お向かいさんの塀。
そのコンクリートの空いているところから、おばさんの目がのぞいていた。






(BGM:山崎まさよし「ふたりでPARISに行こう」from「STEREO」)
→「二人でパーティーに行こう」だと思ったら、タイトル見たらパリだった。
この人の声は一回ハマるとハマるよな。
この曲はアコーディオンとドラムレス(だと思う)でパーカッション、アコギ、ベース、という音数をすごい減らした感じがパリ。
編曲って大事よね。

幼なじみがいたんです


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kaijosha.jpg



(創作です念為)


「幼なじみがいたんですよ」

向かいに座った彼は、二十代後半の青年だ。
深夜のファミレス。
彼は飲み屋さんで働いている。
その飲み屋に客として行ってるウチに仲がよくなった。

今日は、彼が「どうしても聞いてほしい」というので、店が引けた後にここに来た。
どうも「店では話しにくい」話しらしい。


「小さい頃は一緒に遊んだりしていたんですけどね」

彼が住んでいたのは関東の地方都市。
新興住宅地の中で、同い年くらいの子どもがたくさんいたという。
その中でも彼がよく遊んだのがKという男の子だった。
ただ、Kの家は新興住宅地の外れの小山のふもとにあって、昔からの家というか、その新興住宅とは一線を画した感じだったという。


小学校の時はね、クラスが違っても、家が近かったから、よく家に来たり行ったりして、まあ仲良く遊んでいたんですよ。
当時ね、ミクロマンってのが流行っててね。
闘わせたりして遊んでたんだよ。
中学では二人でクイーンにはまってね。
一緒に歌詞カード読んだりして、ああでもないこうでもないとか言い合ってたりしてました。

でも、高校で別々になってしまたんですよね。
彼は頭もよくてね。
いい高校に行ったから。
で、そうなると、やっぱなんか生活リズムが変わるというか、そういうところがあって。
道で会ったら「よお!」なんていうけど、そのくらいの関係になっちゃって。

まあ、なんか元気はないな、とは思ってたんですよ。
勉強について行くのが大変なのかな、とか思ってました。
でもまあ、それでもなんとか高校も出て大学にも行ったらしくて。
東京の大学だって言うから、そこそこ勉強はできてたんだな、と思ってほっとしてたんです。

あ、僕はそのままその町の自動車工場に就職したんですけどね。
そこでまあ、ある先輩が飲み屋をやるって言うんで、一緒に東京に出てきたんです。

なんでまあ、そのまま彼とは会うこともなく過ごしてたんですけど。

ある日、突然、彼がウチの店に来たんです。
なんか、「一緒に住んでる人たち」、と一緒に。
まあ、奇跡の再会じゃないですか。
すごくびっくりしたし、まあ嬉しくてね。
先輩もいいよ、って言ってくれて、一緒に飲んだんです。

その一緒に住んでる人たち、ってのも人当たりがいいというか。
なんか笑顔の人たちで。
今言うシェアハウスの走りですかね。
そういう感じで住んでるらしくて。
三人いたんですけどね。
まあ、彼らとも仲良くなって。
時々飲みにも来てくれたりしてました。

まあ、同郷の人と東京で会うってのは嬉しいもんでね。
懐かしい話とか、ミクロマンで遊んだよな、なんて。


ここで彼が一呼吸置いた。

「再会して半年くらい経った頃かな…」
彼がいなくなったのだという。

え?どういうこと?。
「いわゆる失踪…、ですかね」
途端に彼の言葉は歯切れが悪くなった。


わからないんですよ、よくわかんないんですけどね。
とにかく、彼がいなくなった、帰ってこない、とその仲間の三人から聞いたんです。
一週間ほど帰ってないというんです。

いや、まあ当時彼は大学4年生ですから。
帰ってこないこともあるんじゃないか、彼女でもできたんじゃないか?って。
「そうですよねえ」と、まあその三人もそんなに心配してないんですよ。

まあ、彼女がいるという話は聞いたことがなかったから、それはないとして、としても、就職を控えていろいろ悩みもあって、一人旅してるんじゃないか、とか、実家に戻ってるんじゃないか?って、僕もあまり心配してなかったんですけどね。

で、まあとにかく帰ったら連絡ください、ってその三人にも話しまして。

でも、なんかそのまま連絡がないんですよ。
三ヶ月ほど経っても連絡がない。

ちょっと気になりまして。
まあ、その三人にとっては僕は直接知り合いというわけじゃないし、連絡をするのを忘れたんじゃないかと思って。

「こっちから連絡したんですよ」
そしたらね。
昨日帰ってきた、って言うんです。

「どうだったんですか?何があったんですか?」と聞いたんですが、なんか要領を得ない。
どうも、「何があったか」「どこにいたか」とかについて、この三人は興味がない、という印象を受けたんです。

「彼がそこにいるなら、電話替わってもらえますか?」と言うと、今はコンビニに行ってるというので、Kの携帯に直接メールを入れたんです。

「どこに行ってたんだ」「何してたんだよ」「心配してたんだぞ」「気づいたら電話くれ」

しかし、その日、待っても待っても電話が来ない。
翌日の夕方になって、やっと電話がありましてね。

「よお、久しぶり」なんて言うんです。

「なに言ってんだよ」「どこ行ってたんだよ」と言っても、なんか要領を得ない。
ま、僕は夜の仕事ですからね。
ちょっとすぐに会いに行くことはできない。
とにかく飲みに来い、と。
顔見せろ、と言って、店の準備もあったので、その日は電話を切ったんです。

で、数日後ですかね。
その三人と一緒にKが飲みに来まして。
「何やってたんだ!」と僕は思わず怒っちゃいました。

でも、なんかその僕の怒りを逆なでするかのように、この四人、まったくこの件に触れようとしない。
なんか、「彼がいなくなった」と言うことが「なかった」感じなんですよ。
そこでまあ、なんか押せなくて。

ハッキリしたことはわからないんですが、断片をつなぎ合わせると、とにかくどこかの山に行っていた、みたいな。
その感じは、「おまえに言ってもわからない」という感じもして、僕はとても腹が立ちましてね。
心配してた、ってのもなんかもう馬鹿らしくなってしまって。

でも、なんか妙なんですよ。
ほら、ウチの店、カウンターと4人掛けの椅子席が4つあるだけの小さい店でしょ。
まあ、カウンターの中にいると全部見渡せる。
仕事しながらなんとなく彼らを見てるとね、なんか不自然なんですよ。

なんていうかな。
普通、4人組みたいな感じで飲みに来たお客さんというのは、一人がメインで喋るというか、中に一人くらいは酔っ払っちゃったりなのか、よくは聞いてないけど聞き役、みたいな人がいるというか。
4人が話に集中するってのは、最初のウチだけなんですよね。
そのうち、バラバラに話が始まったりするもんなんです。
ちょっと怒ったり、誰かの悪口とか、そういうので眉をひそめて話すとか、そういうのがあるもんでしょ。

最初に会ったときは彼らの笑顔はウエルカムだったのかな、とも思ったんですが、あの感じがずっとなんですよ。
基本笑顔というか。

で、なんか彼らは常に4人一緒、というか、一緒に話し、一緒に笑う。
…まあ、悪いことじゃないし、仲がいいのかな、くらいの感じかと思うんですが、いや、なんかね、統一感があるというか…。
タバコに火を付けるタイミングも一緒なんですよ…。
まあ、今時、4人いて、4人がタバコを吸うってのも珍しいんですけど…。

なんか逆にちょっとぞっとしまして。
まあ、他の三人については名前くらいしか知らないし、そもそも同じ大学なのかどうかもよくわからなかった、ってことをその時気づきましたけど。


で、その一ヶ月くらい後かな、ある日、その三人がやって来てね。
Kはどうしたんですか?って聞くと、またいなくなったと言うんです。

え?どうして?なんで知らせてくれないんだ!と思いましたけど、なんかねえ、彼ら普通なんですよ。
心配している様子がない。
しかもその三人はよく知りませんから。
問い詰めることもできないというか、問い詰めるこっちを遮断するオーラがあるというか。

それでまた三人で一緒に話し、一緒に飲んで笑ってるというか…。
こりゃなんかおかしいぞ、って。

だって、大学も終わりというか、肌寒くなる頃だったですから。
就職活動とかそういうのもあるじゃないですか。
「あなたたちは心配しないんですか?!」と多少声を荒げて言ったんですけど、なんか三人そろってキョトンとしてる感じなんですよ。
「あ、そうですよねえ」なんて言って、でもまたそのまま一緒に話しが始まって…。


もうこりゃダメだと思ってね。
休みをもらって、彼の実家に行ったんです。
何か手がかりがないかと思って。
まあ、僕もついでに親に顔見せようと思って。

そしたらね、彼の家がね。

「ないんですよ」

取り壊したとかじゃなくて、小山のふもとにあったはずの彼の家があった場所。
それが、なんか、もう小山の一部になってる。
いや、僕がここを離れてまだ数年ですよ。
小山にある雑木林の一部になってる。
たとえ、取り壊されたとして、ここまで小山に浸食されてしまうモノか…と。

愕然としましてね。

母親にKの家のことをたずねたんですけど、「そんな家あったっけ?」と言い出すんです。
「小さい頃によく遊びに来てたじゃないか、Kだよ!K!」というんだけど、思い出せない、という。
いや、確かにウチは当時共働きだったし、Kがウチに来てたときに母親がいなかったこともあったけど、まったく覚えがないってのはおかしいですよね。

でもね、親とそうやって押し問答してる間に、僕もちょっとわからなくなってることに気づきまして。
彼の家にも行った記憶はある。
けれども、彼の家の中の記憶がないんです。
彼の親の顔も忘れてしまっている。
時々アイスをもらったりしたような気がするんですけど、まったく顔が思い出せない。

あれ?おかしいな、と思いまして。

思い出そうとするんだけど、思い出せない。
何かが邪魔をしてるような感じがある。


そこでね、あ、卒業アルバムだ!、と思いまして。
見たんですけど。

「いるんですよ」

いるんです、K。
…でもね、なんか、わかんなくなっちゃって。
そのKの顔見てたらね。
なんか全部幻だったんじゃないか、って思えてきて。
だって、Kの家があった場所はその痕跡はない。
なのに、Kだけがいるって、なんかもう、わかんないですよ…。
そもそもどっから通ってきてたっていうのか…。


その後のKですか?
そのまま戻った、って話しは聞いてません。
三人は時々飲みに来るんですけど、聞きはぐってしまっていて…。
向こうからは帰ったって話しはしてきません。

だから、もうKは今は音信不通ですね。
どこかで元気に生きていてほしいと思うんですけど、なんか、小さい頃の記憶も、再会の記憶も、なんかどうでもよくなってきちゃって。
そうしたら、Kの顔もなんか思い出そうとするんだけど、思い出せないというか…。
割れた鏡に写った顔みたいな、そんな感じにしか思い出せなくなってきて。


でね、なんか次は僕のような気がするんですよ。
最近、なんかあの三人と話が合うようになっちゃって…。
どこの誰かも知らないのに。

佐藤さんも、一度くらい彼らと遭遇してるときがあったと思うんですよ。
あの変な三人組です。
全員めがねの。

だから、もし、僕がいなくなったら、あの三人を絞り上げてください。
どこに僕が行ったか、彼らは必ず知ってる気がするんです。


「なんか、今のうちに誰かに話しておかないと、手遅れになる気がして…。」


彼はそこまで言うと、タバコに火を付けた。
「アレ?吸わないんじゃなかったっけ」とオレが聞くと、彼はこう言った。

「あ、そうですね…。」
僕、いつの間にタバコを吸うようになったんでしょう?






車募集

(BGM:Harry Belafonte「Danny Boy」from「My Favorite Songs」)
→名曲をすごく歌い上げてくれる。
ステレオなんだけど、モノラルにも聞こえる、というか、すげえ耳元で歌われてる感じすらある。

ぜひ機関紙を手にしてください


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虹の会機関紙7月号が発送されました。
にじ屋でも配布していますし、またツイッターのDM等でお伝えくれれば郵送もします。
多くの方に読んでほしいと思って毎月作っております。

今月号は96ページあるので、まあ大変なことですが、JR駅無人化に関する市との話し合いの経緯、にじ屋のレジ袋に関する声明などから、個人のいろいろなコラム記事まで満載であります。

その中から、ちょっとだけですが紹介します。


まず、コウヘイが書いた「たんたん房に行った」という記事ですが、これは6月の終わり、収まった感染者が増える前に、近所の飲み屋ならOKということになって、それについて書いたモノです。

「たんたんぼうのこと」

月ようにおとんにのみに行こうとして、歩いてみせにむかってるとき、休みかもしれないてゆうお話なった。
おみせについたら休みだった。
自分は悔しいです。
ムカツキます。
その時みんなはえーまじかよーとさけんでんでた。
おとんのみせの前でのむ?はなしをした。
今日行くのをやめるか?ちがうみせに行くか?
そうだんしました。
ちかくにあるたんたんぼうに行くことにした。
外口さん、井上さん、陽ちゃん、みずえちゃん、すずちゃん、自分、孝信でたんたんぼうに行きました。
自分がおとんに行こうとみんなをさそいました。
おとんには行ったことがないです。
どうしておとんに行きたかったというと、カラオケバンバンのとなりのいざかやさんおとんがきになっていて、いってみたかったからです。
サッカーのこと
音楽を聞いたこと
アイドルのこと
少年だんのこと
大宮北特別支援学校のこと。
つうちひょうのこと。
ジャニーズの写真を外口さんにみせた。
バスケットのこと。
市丸君と一緒にバッティングセンターにやくそくすること。
この話しをしてもりあがった。
とくにつうちひょうの話で好きなきょうかの話なって
自分は地理が好きでした。
好きな理由が先生がおもしろいから。
てゆう話をしたら外口さん、すずちゃん、もわかる、と言っていて、うれしかったです。
話が楽しかったです。
お店が休みじゃないときに、おとんに行きたいです。

コウヘイ


次に井上が書いた、コロナの自粛中に目覚めたという料理のことについて。

「色々チャレンジ中!!」料理のこと

6月号のおれの連載コーナーでも書きましたが最近夕食を作るのに目覚めました。
今は、コロナの影響でどこも行けないからかな~。
本当だったらもう毎週の用にこうへいと「ハマスタ」に行ってるのに、今年は、どこも行けてないので夕食を作ろうと思いコロナにかからない用に、健康に気を付けています。
※まあ、今年に夕食を作るのに良いチャンスでしょう。
でも、最近よく作っているよ。
にじ屋で体は、つかれているのに、気もちは、夕食を作ってしまう、最近のおれです。
1月、2月のさむい時は、おなべとかカレーシチューを作っていました。
でも、今は、かんめんにはまっています。
「つけめん」です。
魚悦とかで、かんめんを買ってきて汁を作けて食べてます。汁なんか、前は、1時間かけて作ってたのに、今は、10分ぐらいで作ってしまう。
野菜は、加納さんの実家野菜を使っています。
やっぱ、とりたての野菜はいいな~。
毎週もらってるやぁ~。なので足りない肉は魚悦で考えながら買ってます。
それに、包丁の切り方もうまくなってきた気がします。
おれは、方手で包丁つかうのは、本当は、あぶないけどかるがると、工具して使っています。
でも、千切りは、まだやってません。
野菜を大きめに切ったりしています。
おれは、作っているので作った次の日亜希ちゃんや、米本さんにも色々な人に「昨日?作ったよ~。」とか報告しています。
報告してるおれは自分でもうれしくなります。
なぜか、米本さんとかから「色々なアドバイス」をもらえます。アドバイスを聞いて自分なりにできるともしやってます。
ネットの朝ごはんでナスのいためものを食べました。これは米本さんが作ったらしくおれは、米本さんに「どうやって作ったか」聞いてみました。
ナスのいためものを自分で作ってみたくなりまねして作って見ました。
「みそ、ごま油、めんつゆ、さとう」でした。
1回、2回作って見て亜希ちゃんたちの家で食べてもらいました。
やっぱりナスがよくやわらかくなってなくていためものでした。
でも、もう1回作ろう。
マカノリサラダ、カレー、シチュー、ハヤシライス、お肉のいためもの今まで色々作ってきましたが、先日、NO1位にするメニューがあります。
上沼恵美子さんの番組でやっていた。
パプリカハンバーグです。
上沼さんのメニュー1つはまねしようと思っていて自分でついに見つけました。
パプリカハンバーグは、おれは、ひき肉、にんじん、たまねぎを入れて見ました。
パプリカを横にしてわぎりにしてお肉を入れましたが、やく時ぐちゃぐちゃになってしまいました。
おれは、上沼さんみたいに形にやりたかったが、おれには、むりでした。むずかしいな~。
でも、みじん切りはとってもうまくなったよ。
包丁のさきっぽを、上にして下におろすやり方でにんじん、玉ねぎのみじん切りを1時間ぐらいやってたっけ
もちろん「ワイン」を入れてね。
上沼さんの番組は、けっこう楽しいのでもっとできるのかあったら挑戦していきたいです。
上沼さんの番組は、平日のお昼にやっているので、今、おれは、火曜日1回しか見る事ができません。
本当だったら毎日の用に上沼さんの料理番組を見たのだけどそれはむりです。
もう1つの休みは、今、土曜日になっています。
だから1回しか見れません。
土、日の休みじぁなかったらあと1回上沼さんの番組見れたらもっと色々な料理を真似できるのにな~。
たって~、上沼さんの番組は、おもしろいしとっても勉強になります。
今はくやしいな~。週1回だけしか見れなくて。
佐藤先生もたま~に上沼さんのお料理番組見てるって、この前訓練でおれに言っていました。
上沼さんのお料理番組土、日にもやってくれればいいのに~ってかんじ~。
毎日、不思議な、調味料を使ってくるから、どの曜日で何の料理を作るか分らないので、毎日、「上沼さんのおしゃべりクッキング」を見れたらな~と思うこのごろ!!
そしたら、今よりもっと不思議なお料理がチャレンジできのだろうな~。
料理をすることによってごはんを作ったあとのあとかたづけもしっかりするようになりました。
1回やればはまってしまうおれは、あとかだづけした後の水回りは、‎しっかりしています。
食器などかたづけたあと台所まわりに水があるので水をタオルでふくのをおぼえて今もやっています。
だから、水回りは、とってもきれいです。
すごいな~。
おれは!!
夏は、とくに水回りか大事です。
なぜ、水回りをきれいにしているかと言うとふだんにじ屋とか、ネットで台所まわりを、け~子さんが色々やってもらっています。
それを、おれは、ずっと見ていました。
まねをしてみようと思う気もちがあり毎回おれも、ごはんの最後に水回りをタオルでふいています。
人の真似するってすてきで良い勉強になるな~。
良い所を真似すると今度何を真似しようかな~って気もちになります。
良いはすぐ学ぶ事!!勉強になり次どうするのが、自分で考えられるので真似して覚える事です。
け~子さん、すごいな~。
あと、買い物いっても今までは、ただ安いものしか買っていませんでした。
「意味」分らずに、だだ安ければいいや~と言う気もちで買い物していました。
亜希ちゃんたちに教えてもらいみきり品は、その日の内に食べる事をね。
「おとめ品」もその日の内に食べる事を教えてもらいました。
みんなから色々な事を、教えてもらったのでゆっくりごはんを作るのをつづけていくおれです。

いのうえ


次は、カズミの健康診断の話。

「マスクとモトミ」

 先日、モトミとふたりで健康診断に行きました。全員一緒にというのは人数が多すぎるそうで、1日ふたり~3人くらいで振り分けられたので。
 モトミは病院に着いてから、プンプンしていました。ちょっと話しかけても、「○※△#×◆!」となんだか怒っているし、待合室で座る場所にも変にこだわるし。まあ、健康診断というのは、モトミにとって緊張する場所ではあると思います。毎年来ているから、何をするのかだいたい分かっていて想像できちゃうんでしょうね。大嫌いな採血があるのも分かっている。
 だからまあ、プンプンしているのも分かるなと思っていたのですが、途中で、ふと思い至って、私がしていたマスクを外して私の表情を見せてみました。
 そうしたら、途端に「あちいね」「きたない?」「あのね?」と、いつものモトミに戻ったのです。
 ああ、表情が見えないというのは不安なんだな、と改めて思いました。
 コミュニケーションって、言葉だけじゃないですよね。
 ちなみに今回、モトミは大嫌いな採血を頑張りました。いつもだと、そもそも腕を出し続けるのが難しく、針を刺す前に引っ込めてしまって「やだー!!!!!!」と大暴れになってしまったりすることもあるのですが。
 今回は、素直に刺された。
 しかし、今回なぜか血管が見えず、結局3回も針を刺し直すことに!しかも刺して採血始まったかなと思ったら、看護師さん「あれ、はずれちゃった、どこだ…」と、皮膚の下で針をグリグリして血管を探すという…。
「いっっっったああああああい!!!!!」
「たーすけてえええええ!!!!!」
というモトミの叫びに、今回ばかりは共感しました。

かずみ


次に、すずが「専従のページ」に書いたモノ。

 皆さんいかがお過ごしでしょう。コロナで家に籠ることが多くなりました。人と話さなくなるし、そうなると余計なことが浮かび、考えることは大抵悪い方に行きますよね。無気力になり、思考力が低下。最終的に外に出たくなくなるので、長く引きこもっても大体良い事ないですよ。元引きこもり、経験者は語る。
 さて、自粛を解除する方向に進み始めた6月当初、初めて内輪で呑んだとき、みんなと馬鹿なことをして笑える事がとても沁みました。本当に、ひとまずだけれど、乗り超えられて良かったって。
 にじ屋やネットは、みんなが1人暮らしをするために給料を稼いだり、仲間と過すための居場所でもあるけれど、私の居場所でもあります。脱引きこもりをしてから2年ほど経ちましたが、年々その感覚というのは強くなっています。
 本気で何かに打ち込めたり、その事で悩んだり、時には意見を言い合う。そういう事が本当に嬉しく思いました。内にも外にも、みんなと馬鹿をやることの格好良さ、みたいなのをを分かっている仲間がいるから、成り立っていることだと思っいます。
 私はもうあの鬱々とした、死ぬほどつらかった生活には戻りたくないし、みんなだって、実家や施設に戻りたくない。
 だからこそ、もっと仲間を増やして、一緒にくだらない話が出来たり、遊びに行ける人・誘えを人を増やしていきたい。この「輪」が、もっともっと広がってくれたらいい、と思っています。

すず


最後に、外口さんのPCR検査のことについて。

 微熱が続いていたコバの通院と、健康診断のレントゲンで影があると言われたオグラの通院に一緒に行った。
 近くの同じ病院で診てもらったのだけれど、このコロナでの医療現場の大変さ、緊張感が伝わってきた。

 コバの通院のために病院のホームページを確認したところ、熱がある人は前もって連絡するように書かれていた。
 病院に電話をして微熱とそれ以外の症状はないことを伝えたところ、発熱している人は今まで通りの内科ではなく、予約の発熱外来という形で診ているとのこと。
 予約した時間に病院に行くと、入り口で体温チェックと「発熱外来」と伝えると、コバはすぐ横の隔離された場所に入っていった。
 そして、20分くらいしてから発熱外来の診察室に案内された。医者と看護士はフェイスシールドにマスク、手袋、ビニールで代用したエプロンを着けていて、まさにコロナ禍だった。
 あらためて微熱が1週間続いていることを伝えたところ、原因を調べるための血液検査とレントゲンと、「今はコロナということもあるので、念のため検査をしますか」とあっさり聞かれた。
 「検査ができるならお願いします。」えっ、まさかこんな簡単に…と思ったけれど、PCR検査ができるならやってもらった方がいい!

 まずはこの診察室で採血をして、その後、隣の処置室的な部屋に移動した。ここは、ストレッチャーをカーテンで仕切って待機場所を兼ねていた。
 しばらくしてレントゲンを撮りに。いつもなら持って移動するカルテのファイルも渡されず、放射線科の前で待っている技師が見えた。
 レントゲンを撮ったら発熱外来の処置室に戻ってきて待機。そしてPCR検査で鼻から検体を採取した。
 医者の指示でコバはストレッチャーに仰向けになった。「えっ、なんで?」と思ったけれど、その後、コバの頭から肩までビニールシートで覆われた。
 飛沫感染を防ぐためにこのビニールシートもパイプで枠を作って自作したようで、横のビニールの切れ目から手を入れて検体を採取していた。
 フェイスシールドとマスクと手袋とビニールのエプロン、そしてコバを覆っているビニールシート。そこには、緊張感しかない。

 オグラの通院の時も、健診での肺炎の疑いで、念のためということも合わせてPCR検査を受けることができた。(レントゲンの肺の影の方は、炎症反応がないので以前の肺炎の跡ではないかと。まずは一安心なのだけれど、オグラ自身が肺炎になった記憶がないという…)
 オグラは唾液でのPCR検査になっていたのだけれど、コバの時もオグラの時も、こんな緊張感の中にいながら、医者と看護士の話し方や動きは穏やかだった。
 それは、自分たちに安心感をくれた。


そのほか、字が追いつかない市丸が自分の家の草取りについて絵で描いたとか、まあいろいろ載ってますので、ぜひ入手してほしいところであります。
現在、デジタルにはなってないので、具体的に入手していただくほかございません。






書店員

車募集


(BGM:Linda Ronstadt「Be My Baby」from「Dedicated To The One I Love」)
→小学校の頃、隣のお兄ちゃんとかがよく聞いてた。
これは子守歌シリーズ、みたいなことなのかしら。
ロネッツのカバーと言うことになるのか、元もいいけど、こういうアレンジにしてきたのはいいと思う。

そうだったのか (創作)


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kaijosha.jpg



(創作です念為)


女房が死んだ。
葬式が終わって、亡骸はこんなに小さな骨壺に収まってしまった。

彼女とは仕事場で知り合って、1年くらい付き合って結婚した。
子どもはもう成人して、家を出ている。
数年前から彼女はパートに出ていて、遅れた共稼ぎ夫婦になった。

子どもがいないということで、パートの交代や夜遅くの時もあって、すれ違いは多くなったが、私は台所に入らないタイプじゃないし、そんなに不便はなかった。

そんな折、パート先からの帰り道、自転車の彼女は大型のダンプに巻き込まれた。
病院に担ぎ込まれたときにはもう死んでいた。

大型ダンプの運転手はそれはもうこっちが恐縮するほど小さくなって、何度も何度も床に額を擦り付けた。
最初のウチは腹も立ったが、毎日そんなことをされているウチに、許してやろうという気にもなった。

私は仕事を辞めた。
もう働く必要もない気がした。
この家のローンも払い終わっている。
どのみち、あと5年で定年だ。
早期退職者を募っている会社の方針もあり、私は手を上げた。

近くの墓所に墓を買おうと思っているのだが、まだ動き出せていない。
大きな穴が自分の中にできてしまったようで、何をするにももうちょっと時間が必要な気がする。
彼女が骨壺に収まって半年が経つ。
早く決めてやらねば、と思いながら、毎日骨壺の前に座っている。

思えば、専業主婦にしてしまったことも彼女にとってどうだったんだろう。
仕事を続けたかったのじゃないだろうか。
息子が出て行って、パートを始めたのも、続けたかったからじゃないだろうか。

いつだって、疲れて帰ってきても、彼女はいつも笑顔で食事を用意して待っていてくれた。
子どもPTA、近所の自治会のことも積極的に参加してくれていた。
よくできた女房だったと思う。

けれど、彼女にとって、オレはいい夫だったのだろうか。

子どもが大学に行って時間ができると、よく夫婦で旅行にも行ったっけ。
あれはどこだったか、見晴らしのいい海岸を望む高台で年甲斐もなくキスをしたっけ。

よかった想い出だけが次々に蘇ってくる。
そして、彼女の骨壺に語り続ける。
「オレはいい夫だったか?」と。

そして、ふと思い出したんだ。
パートに出るようになって半年くらいしてからだったか。
彼女が遅くなる日が続くようになったことがあった。
思えば、家にいるときもいつも携帯をいじっていた気がする。

そうだ、彼女の携帯…。
警察から戻ってきたけれど、そのまま手つかずだった遺品の中にあったはずだ。

彼女の携帯には、一緒に行った観光地のストラップがついていた記憶があるが、事故の衝撃かなくなっていた。
充電コードを差し込んで携帯を起動する。

写真を開けてみたら、そこには知らない男が写っていた。
食事に行ったと思われるシーン、自撮りをしたのだろうか、彼女の顔はアップだ。
数枚先には、どうみても男と一緒にはだけた肩を出して布団に入っている彼女がいた。

どういうことだ…。
言葉もない。
年甲斐もなく、彼女は不倫をしていたのか…。

メールを開けてみたら、濃厚な恋人のような会話が綴られている。
「あなたと今会いたい」
「離婚してあなたと再婚したいわ」
「若いときにあなたと出会いたかった」

最後のメールには「さっきはありがとう、楽しかったね」という文字とともにハートが踊っていた。
それは、警察に知らされた事故発生時刻の数分前だった。

そうか。
そうか…。

不思議と私は冷静だった。
怒りがわいてくることもない。
心には凪。
感情がどこにも吹いていかない。

その相手は彼女のパート先の同年代の男だった。
そういえば、私も一度くらい会った気がする。

そうか。
そうだったのか。

翌朝、私は、女房がパートをしていた小さな設計事務所をたずねた。
数人の社員と、その男がいた。
ざわめく事務所内。
私が亡くなった女房の旦那だと言うことは、葬式にみんな来てくれたから知っている。

「どうしたんですか?」という声をよそに、私は、無言で骨壺を抱いたまま、彼と相対した。

「女房はあなたと一緒になりたかったそうです」
「ぜひ、最後は、一緒になってやってください」
「ここに彼女、置いていきます」

事務所は静まりかえった。
彼のデスクに骨壺を置いて、私は背を向けた。

ごめんな。
いい夫じゃなくて。

でもこれで、おまえの最後の願いは叶えてやれたか。
最後くらいは、おまえの望みを叶えたい。

帰り道、真っ黒な闇の中に、自分はいた。
心には凪。
何の感情もなくなっていた。

これですべて終わった。
私のこれからの人生は、彼女と生きてきた30年分の自分の後悔を、真っ黒な闇に放り込むことに費やそうと思う。








書店員

車募集


(BGM:Jennifer Lopez「I'm Real」from「J.Lo」)
→YMOのファイヤクラッカーを大胆にもってきたなあ、これ。
マーティンデニーが原曲となるわけですが、これはYMOバージョンを持ってきてますな。

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