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スーパーちんどん・さとう

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(創作です念為)


君子は小学校の頃から先生に厳しくいわれてしまうタイプだった。
多少のいたずらでも笑ってすます先生も、君子がちょっと消しゴムのかすを床に落としただけで大声で叱責した。
それでいて君子は先生の言うことは聞かなきゃいけないと思ったから、素直に従った。

おちゃらけた男子生徒がふざけて他の女子生徒の鉛筆などを隠してしまうと、烈火の如く怒った。
そんな時、大騒ぎになって、きまって君子が先生に怒られた。
鉛筆を隠された女子も、どこか笑っていて、君子をかばいもしなかった。

君子は服装に気を使わない子だった。
それは大学に行っても変わらず、毛玉のついたセーターをいつも着ていたし、ちょっとふっくらしたその体型にはおおよそ似合わないぴったりしたズボンにシャツを入れたりしていた。

でも、君子はマジメだったから、授業もサボらないし、ノートも完璧だったから、他の生徒からは最初は頼りにされた。
けれど、正義感の強い君子は「授業も出ていない人にノートは貸したくない」と拒否。
いきおい、大学の仲間からも浮いた。

そんな君子だけれど、かといって成績がいいわけでもなかった。
つまりは、要領が悪いのである。
なにを覚えて、なにを捨てればいいのか、がわからなかった。

それでも、授業には出てるわけだし、先生からのウケがいいか、というとそうではなかった。
小学校の時と同じように、先生はよく君子を叱った。

ゼミの時だった。
とある地方の歴史を調べるという発表の時、君子は細かい字でびっしりと図書館で調べたことを書いたレポートを提出したのだが、それは確かに努力の跡は見られるモノの、的外れだった。

それでもまあ、努力したんだからしょうがないわな、君子だし、とゼミ生は思ったのだが、先生は、それを徹底的に指摘した。
その指摘は、細かい、本論にあたらない部分にまで及び、ゼミのほとんどの時間を費やす結果となった。

他のゼミ生も、「もうそのくらいでいいんじゃないの?」と思ったが、それを君子は黙って聞いていた。
その表情は、泣くでもなく、怒るでもなく、それがまた他のゼミ生を不安にさせた。

彼女は、大学院に進んだ。
というか、就職ができなかったのである。
けれども、就職浪人するのは彼女のプライドも許さなかったのだろう、と他の同窓生は思った。

しかし、大学院に進んだところで、彼女の「要領の悪さ」は、治らなかった。
が、君子が大学院を出る頃はまだバブルの余波があった。
大学院を出たということを買われて、教授の紹介でとある図書館の司書となった。

彼女はそこでも真面目に働いた。
要領が多少悪くても、そもそも人数の少ない職場だったから、まわりにはそんなに影響しなかった。

世の中はバブルが弾け、図書館の司書という仕事は役所の正職から、派遣扱いとなった。
彼女はそこでこのまま続けるかどうかを一応考えはしたが、そのまま続ける決断をした。
というか、彼女はどうやったら他の仕事に就けるのかがよくわかなかった。
そして、彼女には他の仕事に就く相談をする相手がいなかった。

彼女の部屋は、大学の時から同じアパート。
六畳にキッチンがついた狭いところで、手入れがあまり必要のない観葉植物を部屋に置いていたから、なお狭かったが、その部屋には自分以外の人が上がったことはない。
自分一人が寝るだけの部屋だから、そんなに不自由はなかった。

その生活を、もう彼女は15年近く続けていた。

近所に住む大屋さんのお婆ちゃんはとても優しく、彼女のことを見かけると必ずあいさつをしてくれた。
けれど、そこの息子は、みかけるたびにいつも君子を蔑むような目で見てきたが、君子も彼には興味がなかった。

2年に一度、自分を担当してくれた大学の教授の集まりがあって、そこに君子は必ず出席した。
大学の頃に着ていた毛玉のセーターを着て、当時と同じ丸い大きなサイズのメガネをかけて。
君子はこぎれいにはしているものの、服装に無頓着なのだ。
他の同窓生はそれを知っているから、もうなにもいわない。

彼女の近況報告は毎年変わらなかった。
彼女の中では、なにか細かい変化はあるようだったが、それは他の同窓生から見ると、なにが違うのかわからなかった。

結婚した、転勤した、子どもができた、そんな話に花が咲く同窓会の中で、彼女の存在はかなり浮いていたが、彼女自身がそれに気づいてなかった。
同窓生の中には「あの子、どうして毎回来るんだろう」といぶかしがる者もいた。

というか、君子にはスケジュール帳に書き込む予定がなかったのだ。
誰かとどこかに飲みに行くこともない。
仕事のパートナーの女性二人はそれぞれ家庭があり、飲みに行く雰囲気はないし、やることといえば、買い物と好きな本を買って読むこと。
彼女の家にはテレビもなかった。
聞けば、小学校の頃から家にはテレビがなかったらしい。

彼女が40になった頃、彼女の後輩にあたる大学院生だった優子と駅前でばったり会った。
今日ヒマだから、お茶でもしませんか?という優子の誘いを君子は断らなかった。
特に今日もすることはなかったからだ。

そこで話は盛り上がらなかった。
優子は、ちょっと話を盛り上げようと自身がいま不倫をしていることを君子に話したんだが、君子は「そんなことはやめなさい」というだけで、話は終わってしまった。
静寂の中、二人はイイ時間で喫茶店を出た。

君子は今、50になった。
彼女はそのままあのアパートに住んでいる。

大屋のお婆ちゃんや、ちょっと会話を交わせる人はいるし、時々思い出したように、同窓生に電話をすることもある。
けれど、彼らは、彼女と深く付き合うことを避けた。
そして、避けられていることを彼女は気づかなかった。

彼女の人生には、なにも起こっていない。
朝図書館に出かけ、買い物をして帰ってくる。
寝て、また起きて図書館に出かける。

でも、彼女はそれ以上のことを望むことはなかったし、処女であることにも疑問はなかった。
時々、劣情のようなモノが涌いてきて、自分の股間に手を滑らせる夜もあったが、それはそれで満足して次の日を迎えた。

とりあえず、一人が慎ましく食べていくだけのお金はもらえているし、年金も払っている。
それ以上になにが必要だろうか。

だって、君子は正しく生きているのだ。
そして、その生き方こそが、教師や教授が恐れていた未来だったことに、彼女は気づかなかっただけだ。




bakagann.jpg

(BGM:Mad Caddies「Leavin'」from「Fat Music volume 6 Uncontrollable Fatulence」)
→この曲はこのコンピの中でも異色なんだけど、いや、センスいいよね。
いきなりカントリー調で始まったかと思いきや、いつの間にかパンクになっている。
と思ったら、なんだかリパブールサウンド風?に変化してたりして。
全編にわたるホーン隊がなかなかかっこよくて、これはただ者じゃないわ。
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