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スーパーちんどん・さとう

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小学生の時、徒歩で通ってたんだけど。
団地の外の学校に行っていたのだけれど、同じ団地から三人くらいその学校に行っていて、まあ仲良く帰ったりしてた。
それをSくん、Hくん、としておく。

学校から駅を越えたところに駄菓子屋があって。
時々お金がある時には寄ったりもして。
その先に、住宅地にわざわざ作った感じの人工的な公園、というか空き地というか。
そういうのがあって。
なんか簡単な滑り台があって。
そこでちょっとランドセルを置いて遊んだりもした。

Hくんはちょっと家の事情が複雑そうで、あまり早く帰りたくなさそうだったこともあり、俺たちは時間を潰すことばかりを考えていた。
Sくんのお母さんは低学年の頃だったと思うけどお腹が大きかったりして、あまり早く帰ってこいとも言われてなく。
俺のウチもおふくろが働いていたので同じですね。
帰っても家に誰かいるわけじゃないから。
当時はまだ塾に行くという子どもは多くなく、俺たちはもちろん行ってなかった。
だから、たいがいいつも一緒であった。
クラスが変わっても、まあ一緒に帰っていたから、そこそこ仲もよかったのだと思う。

Hの家は、お兄さんとお母さんがいた。
時々遊びに行ったけれど、お母さんはいつもタバコを吸っていて、缶ジュースとかを出してくれた。
とても若く見えた。
部屋はとても雑然としていて、どこまでがHの部屋でどこまでが居間なのかというのがわからなくてちょっと居場所がない感じでわさわさとした気持ちになったが、でもまあそれがいつものHの生活のようだった。
お兄さんというのはいつもいなくて、顔も見たことがない。
でも、お兄さんとHは仲良かったらしく、お兄さんのレコード、とかいって洋楽のレコードとかをちょっと自慢げに聴かせてくれたりした。

ある日、恐らく5年生か6年生だったと思うのだけれど、Sが同じクラスの友だちから「幽霊が出る林がある」というのを聞いてきた。
その場所は、駅から団地に向かう、駄菓子屋のちょっと先。
団地は埋め立て地なのだけれど、その埋め立て地と元の土地の間にある林。
そこは緩やかな斜面になっていることもあって、「入ってはいけない」ということになっていた。
そして、そもそも暗く、斜面でもあったので、俺たちは特に入りたいとも思ったことがなかった。

でも、その話を聞いて、Hは行ってみようよ、と言いだした。
俺は怖がりだったから、イヤだと主張したのだが、ちょっとだけだから、というHとSに押される形でその林に入った。

今考えれば、林というよりは、ただ放置された場所だったのだな。
傾斜地だし、売れるわけではない土地。
でもまあ、そもそも防風林だったらしき林は残っている、というような。
だから、足下にも雑草が多く生えていた。
俺は雑草とかが足に触るのが苦手なのだが、その時は足下くらいまでしかなかったし、足に不快感がなかったので、長ズボンの時、そして秋とか冬だったのだと思う。

本来の通学路は舗装されているが、そこから一歩外れると林になる。
が、通学路の方が一段低く作られているので、林の部分は上、ということになる。
なので、そもそもその傾斜に入る前の道路に面して建っている家の裏に回り、そこから林に入った。

思ったよりも暗かった。
夕方だったこともあるのかもしれない。

先に進むH。
それを追ってS。
そして、置いていかれたらむしろ大変だと必死に怖いのを堪えてその後ろに俺。

するとSが言った。
「おい、あそこに小屋があるぞ」
確かに小屋がある。
うち捨てられた感じの小屋。
どう考えても、数年の間、人が出入りしている感じはしない。
Sはこの時点でビビっていて、「もう帰ろう」と俺と同じ意見に傾き始めていた。

「入ってみようぜ」とH。
「やめようよ。もう戻ろうよ」という俺とSの声を無視してHは進む。
置いていかれたら大変だと、俺たちはそれに従うしかない。
むしろ、Hがいてくれた方が心強い。
俺とSだけだったら、この状況、怖くて先にもあとにも進めなくなってしまいそうだった。

小屋に着くと、小屋というより物置だった。
何かしらの道具が入っていたのではないだろうか。
例えば、この林の雑草を管理する人たちのための、みたいな。
でも、にしては、出入りした形跡がない。
そもそも木でできていて、古そうに見える。

「開けてみよう」とH。
「やめようよ」という俺たちの声を無視してHは扉に手をかける。

その時だった。
ドンドンドン!
それは、ものすごい強さで中から扉を叩く音だった。
俺とSは悲鳴を上げながら来た道を戻る。
何度か雑草や木の根に足を取られ転ぶこともあったが、それでも林の入り口までたどり着く。
その時に、Hを置いてきたことを思い出す。
Hは、ドンドンドンという音に腰を抜かしてしまったのか、座り込んでしまっていたのだ。
それを置いたまま逃げてきてしまったことを思い出したのだ。

どうする?戻るか?…と、相談するが、戻りたくない正直な気持ちと、Hを置いていくわけにはいかない、という気持ちが入り交じる。
しかし、ここで置いてきてHに何かあったら俺たちが怒られる…という気持ちが最終的に俺たちをもう一度小屋に向かわせた。

が、何度探してもHは見つからない。
どころか、小屋そのものが見つからないのだ。
ハッキリと小屋もあり、ドンドンドンという音も聞いた。
なんなら音と共に振動した扉も見た。

が、ない。
いくら林とはいえ、そんなに広いワケではないし、林の中は知らずとも、まわりの家々、道路などはよ~く知っている。
あのくらいの小屋であれば、この場所になければおかしい、という場所に、そもそも小屋がないのである。

途方に暮れたSと俺。
交わす言葉も出ない。
「小屋がないね」と話せば、小屋がなくなってしまったというのが現実になるような気がして、その言葉が出なかった。

そこでSが、「きっと、Hは先に帰ったんだよ」と言った。
俺はどっかその言葉に救われた気がして「そうだね」「きっとそうだよ」とそれに同意した。
その日はそこから団地までSと二人で帰った。
もう辺りは薄暗くなっていた。

翌日、朝、まず急いでHのクラスに行った。
Hは来てるかどうか、そのクラスの子にたずねた。
「H?」
その子は他の子に「Hなんてこのクラスにいたっけ?」と聞いている。

え?

Hがいたはずのクラスには、Hなんて子はいないというのだ。
そんな…。
俺はSを探しだし、Sに「Hがいない!」と言ったが、Sも「Hって誰?」とぽかんとしている。
「ねえ、昨日、林に行ったじゃない?」「ほら、小屋があって…」とSに話をするも、Sは「小屋?小屋なんかなかったじゃん」「結局、幽霊なんか出なかったから二人で帰ったじゃん」と言う。
「Hも一緒だっただろ?」と言うのだが、SはHなんか知らない、という。

授業が始まってからも、俺は混乱していた。
家に帰り、親にも聞いてみた。
同じ団地だから、親同士も仲がよかったはずだ。
「Hくん?Sくんじゃなくて?」と、Hのことを母親も全く覚えていなかった。

俺はそのあとHの家にも行ってみた。
行ってみたが、そこに住んでいたのはおじいちゃんとおばあちゃんだった。

その後、結局俺はHに会っていない。
同窓会に行っても誰もHのコトを覚えていない。
Hがどこに行ったのか?
いや、そもそもHなんかは始めからいなかったのか?
いや、でも俺はHの家にも行っている。
お母さんにも会っている。

Sともその後数度会ったが、あの時に小屋なんかなかった、ということは変わらなかった。
「なにしつこく言ってんだよ」というSの態度にだんだん二人の仲も悪くなっていった。
中学も一緒だったが、中学では部活が始まったこともあったが一緒に帰ることはなかった。

そんなSと、先日、都内に出かけた時に偶然再会した。
とあるイベントで俺の前に座っていたのである。
お互い年を取ったが、Sは髪こそ白髪になっていたが顔はあまり変わってなかった。
久々の再会を喜びながら、Sは言った。
「おまえ、Hって子のことしつこく言ってたよな」
「俺は全然覚えてなかったし、俺はいつもお前と二人で帰ってたと思ってたけどさ」
「あの後、時々夢に見るんだよ」
「もう一人いて、三人で下校してるところ」
「それで、そのもう一人が、夢の最後に必ず言うんだよね」
「林なんかに行くんじゃなかった」って…。

俺とSは二人でまたあの林に行く約束をした。
もしかして、そこには小屋があって、まだその前に腰を抜かしたHがいるような気がして…。

以上、エイプリルフールのお話でした。







(BGM:坂本龍一「Tong Poo」from「BTTB」)
→元々ポップな文脈で聞いていた曲がこうやってピアノソロ、クラシックっぽく生まれ変わるという感じになるわけですが。
どっかね、まあいいんだと思うし、曲の良さというのは光るのかもしれないが、俺はちょっとどっかポップのママでよかったのに…という気がしてしまうのだが、それは好き嫌いの話。
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