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スーパーちんどん・さとう

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そうだったのか (創作)


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kaijosha.jpg



(創作です念為)


女房が死んだ。
葬式が終わって、亡骸はこんなに小さな骨壺に収まってしまった。

彼女とは仕事場で知り合って、1年くらい付き合って結婚した。
子どもはもう成人して、家を出ている。
数年前から彼女はパートに出ていて、遅れた共稼ぎ夫婦になった。

子どもがいないということで、パートの交代や夜遅くの時もあって、すれ違いは多くなったが、私は台所に入らないタイプじゃないし、そんなに不便はなかった。

そんな折、パート先からの帰り道、自転車の彼女は大型のダンプに巻き込まれた。
病院に担ぎ込まれたときにはもう死んでいた。

大型ダンプの運転手はそれはもうこっちが恐縮するほど小さくなって、何度も何度も床に額を擦り付けた。
最初のウチは腹も立ったが、毎日そんなことをされているウチに、許してやろうという気にもなった。

私は仕事を辞めた。
もう働く必要もない気がした。
この家のローンも払い終わっている。
どのみち、あと5年で定年だ。
早期退職者を募っている会社の方針もあり、私は手を上げた。

近くの墓所に墓を買おうと思っているのだが、まだ動き出せていない。
大きな穴が自分の中にできてしまったようで、何をするにももうちょっと時間が必要な気がする。
彼女が骨壺に収まって半年が経つ。
早く決めてやらねば、と思いながら、毎日骨壺の前に座っている。

思えば、専業主婦にしてしまったことも彼女にとってどうだったんだろう。
仕事を続けたかったのじゃないだろうか。
息子が出て行って、パートを始めたのも、続けたかったからじゃないだろうか。

いつだって、疲れて帰ってきても、彼女はいつも笑顔で食事を用意して待っていてくれた。
子どもPTA、近所の自治会のことも積極的に参加してくれていた。
よくできた女房だったと思う。

けれど、彼女にとって、オレはいい夫だったのだろうか。

子どもが大学に行って時間ができると、よく夫婦で旅行にも行ったっけ。
あれはどこだったか、見晴らしのいい海岸を望む高台で年甲斐もなくキスをしたっけ。

よかった想い出だけが次々に蘇ってくる。
そして、彼女の骨壺に語り続ける。
「オレはいい夫だったか?」と。

そして、ふと思い出したんだ。
パートに出るようになって半年くらいしてからだったか。
彼女が遅くなる日が続くようになったことがあった。
思えば、家にいるときもいつも携帯をいじっていた気がする。

そうだ、彼女の携帯…。
警察から戻ってきたけれど、そのまま手つかずだった遺品の中にあったはずだ。

彼女の携帯には、一緒に行った観光地のストラップがついていた記憶があるが、事故の衝撃かなくなっていた。
充電コードを差し込んで携帯を起動する。

写真を開けてみたら、そこには知らない男が写っていた。
食事に行ったと思われるシーン、自撮りをしたのだろうか、彼女の顔はアップだ。
数枚先には、どうみても男と一緒にはだけた肩を出して布団に入っている彼女がいた。

どういうことだ…。
言葉もない。
年甲斐もなく、彼女は不倫をしていたのか…。

メールを開けてみたら、濃厚な恋人のような会話が綴られている。
「あなたと今会いたい」
「離婚してあなたと再婚したいわ」
「若いときにあなたと出会いたかった」

最後のメールには「さっきはありがとう、楽しかったね」という文字とともにハートが踊っていた。
それは、警察に知らされた事故発生時刻の数分前だった。

そうか。
そうか…。

不思議と私は冷静だった。
怒りがわいてくることもない。
心には凪。
感情がどこにも吹いていかない。

その相手は彼女のパート先の同年代の男だった。
そういえば、私も一度くらい会った気がする。

そうか。
そうだったのか。

翌朝、私は、女房がパートをしていた小さな設計事務所をたずねた。
数人の社員と、その男がいた。
ざわめく事務所内。
私が亡くなった女房の旦那だと言うことは、葬式にみんな来てくれたから知っている。

「どうしたんですか?」という声をよそに、私は、無言で骨壺を抱いたまま、彼と相対した。

「女房はあなたと一緒になりたかったそうです」
「ぜひ、最後は、一緒になってやってください」
「ここに彼女、置いていきます」

事務所は静まりかえった。
彼のデスクに骨壺を置いて、私は背を向けた。

ごめんな。
いい夫じゃなくて。

でもこれで、おまえの最後の願いは叶えてやれたか。
最後くらいは、おまえの望みを叶えたい。

帰り道、真っ黒な闇の中に、自分はいた。
心には凪。
何の感情もなくなっていた。

これですべて終わった。
私のこれからの人生は、彼女と生きてきた30年分の自分の後悔を、真っ黒な闇に放り込むことに費やそうと思う。








書店員

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(BGM:Jennifer Lopez「I'm Real」from「J.Lo」)
→YMOのファイヤクラッカーを大胆にもってきたなあ、これ。
マーティンデニーが原曲となるわけですが、これはYMOバージョンを持ってきてますな。
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