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(創作です念為)
「幼なじみがいたんですよ」
向かいに座った彼は、二十代後半の青年だ。
深夜のファミレス。
彼は飲み屋さんで働いている。
その飲み屋に客として行ってるウチに仲がよくなった。
今日は、彼が「どうしても聞いてほしい」というので、店が引けた後にここに来た。
どうも「店では話しにくい」話しらしい。
「小さい頃は一緒に遊んだりしていたんですけどね」
彼が住んでいたのは関東の地方都市。
新興住宅地の中で、同い年くらいの子どもがたくさんいたという。
その中でも彼がよく遊んだのがKという男の子だった。
ただ、Kの家は新興住宅地の外れの小山のふもとにあって、昔からの家というか、その新興住宅とは一線を画した感じだったという。
小学校の時はね、クラスが違っても、家が近かったから、よく家に来たり行ったりして、まあ仲良く遊んでいたんですよ。
当時ね、ミクロマンってのが流行っててね。
闘わせたりして遊んでたんだよ。
中学では二人でクイーンにはまってね。
一緒に歌詞カード読んだりして、ああでもないこうでもないとか言い合ってたりしてました。
でも、高校で別々になってしまたんですよね。
彼は頭もよくてね。
いい高校に行ったから。
で、そうなると、やっぱなんか生活リズムが変わるというか、そういうところがあって。
道で会ったら「よお!」なんていうけど、そのくらいの関係になっちゃって。
まあ、なんか元気はないな、とは思ってたんですよ。
勉強について行くのが大変なのかな、とか思ってました。
でもまあ、それでもなんとか高校も出て大学にも行ったらしくて。
東京の大学だって言うから、そこそこ勉強はできてたんだな、と思ってほっとしてたんです。
あ、僕はそのままその町の自動車工場に就職したんですけどね。
そこでまあ、ある先輩が飲み屋をやるって言うんで、一緒に東京に出てきたんです。
なんでまあ、そのまま彼とは会うこともなく過ごしてたんですけど。
ある日、突然、彼がウチの店に来たんです。
なんか、「一緒に住んでる人たち」、と一緒に。
まあ、奇跡の再会じゃないですか。
すごくびっくりしたし、まあ嬉しくてね。
先輩もいいよ、って言ってくれて、一緒に飲んだんです。
その一緒に住んでる人たち、ってのも人当たりがいいというか。
なんか笑顔の人たちで。
今言うシェアハウスの走りですかね。
そういう感じで住んでるらしくて。
三人いたんですけどね。
まあ、彼らとも仲良くなって。
時々飲みにも来てくれたりしてました。
まあ、同郷の人と東京で会うってのは嬉しいもんでね。
懐かしい話とか、ミクロマンで遊んだよな、なんて。
ここで彼が一呼吸置いた。
「再会して半年くらい経った頃かな…」
彼がいなくなったのだという。
え?どういうこと?。
「いわゆる失踪…、ですかね」
途端に彼の言葉は歯切れが悪くなった。
わからないんですよ、よくわかんないんですけどね。
とにかく、彼がいなくなった、帰ってこない、とその仲間の三人から聞いたんです。
一週間ほど帰ってないというんです。
いや、まあ当時彼は大学4年生ですから。
帰ってこないこともあるんじゃないか、彼女でもできたんじゃないか?って。
「そうですよねえ」と、まあその三人もそんなに心配してないんですよ。
まあ、彼女がいるという話は聞いたことがなかったから、それはないとして、としても、就職を控えていろいろ悩みもあって、一人旅してるんじゃないか、とか、実家に戻ってるんじゃないか?って、僕もあまり心配してなかったんですけどね。
で、まあとにかく帰ったら連絡ください、ってその三人にも話しまして。
でも、なんかそのまま連絡がないんですよ。
三ヶ月ほど経っても連絡がない。
ちょっと気になりまして。
まあ、その三人にとっては僕は直接知り合いというわけじゃないし、連絡をするのを忘れたんじゃないかと思って。
「こっちから連絡したんですよ」
そしたらね。
昨日帰ってきた、って言うんです。
「どうだったんですか?何があったんですか?」と聞いたんですが、なんか要領を得ない。
どうも、「何があったか」「どこにいたか」とかについて、この三人は興味がない、という印象を受けたんです。
「彼がそこにいるなら、電話替わってもらえますか?」と言うと、今はコンビニに行ってるというので、Kの携帯に直接メールを入れたんです。
「どこに行ってたんだ」「何してたんだよ」「心配してたんだぞ」「気づいたら電話くれ」
しかし、その日、待っても待っても電話が来ない。
翌日の夕方になって、やっと電話がありましてね。
「よお、久しぶり」なんて言うんです。
「なに言ってんだよ」「どこ行ってたんだよ」と言っても、なんか要領を得ない。
ま、僕は夜の仕事ですからね。
ちょっとすぐに会いに行くことはできない。
とにかく飲みに来い、と。
顔見せろ、と言って、店の準備もあったので、その日は電話を切ったんです。
で、数日後ですかね。
その三人と一緒にKが飲みに来まして。
「何やってたんだ!」と僕は思わず怒っちゃいました。
でも、なんかその僕の怒りを逆なでするかのように、この四人、まったくこの件に触れようとしない。
なんか、「彼がいなくなった」と言うことが「なかった」感じなんですよ。
そこでまあ、なんか押せなくて。
ハッキリしたことはわからないんですが、断片をつなぎ合わせると、とにかくどこかの山に行っていた、みたいな。
その感じは、「おまえに言ってもわからない」という感じもして、僕はとても腹が立ちましてね。
心配してた、ってのもなんかもう馬鹿らしくなってしまって。
でも、なんか妙なんですよ。
ほら、ウチの店、カウンターと4人掛けの椅子席が4つあるだけの小さい店でしょ。
まあ、カウンターの中にいると全部見渡せる。
仕事しながらなんとなく彼らを見てるとね、なんか不自然なんですよ。
なんていうかな。
普通、4人組みたいな感じで飲みに来たお客さんというのは、一人がメインで喋るというか、中に一人くらいは酔っ払っちゃったりなのか、よくは聞いてないけど聞き役、みたいな人がいるというか。
4人が話に集中するってのは、最初のウチだけなんですよね。
そのうち、バラバラに話が始まったりするもんなんです。
ちょっと怒ったり、誰かの悪口とか、そういうので眉をひそめて話すとか、そういうのがあるもんでしょ。
最初に会ったときは彼らの笑顔はウエルカムだったのかな、とも思ったんですが、あの感じがずっとなんですよ。
基本笑顔というか。
で、なんか彼らは常に4人一緒、というか、一緒に話し、一緒に笑う。
…まあ、悪いことじゃないし、仲がいいのかな、くらいの感じかと思うんですが、いや、なんかね、統一感があるというか…。
タバコに火を付けるタイミングも一緒なんですよ…。
まあ、今時、4人いて、4人がタバコを吸うってのも珍しいんですけど…。
なんか逆にちょっとぞっとしまして。
まあ、他の三人については名前くらいしか知らないし、そもそも同じ大学なのかどうかもよくわからなかった、ってことをその時気づきましたけど。
で、その一ヶ月くらい後かな、ある日、その三人がやって来てね。
Kはどうしたんですか?って聞くと、またいなくなったと言うんです。
え?どうして?なんで知らせてくれないんだ!と思いましたけど、なんかねえ、彼ら普通なんですよ。
心配している様子がない。
しかもその三人はよく知りませんから。
問い詰めることもできないというか、問い詰めるこっちを遮断するオーラがあるというか。
それでまた三人で一緒に話し、一緒に飲んで笑ってるというか…。
こりゃなんかおかしいぞ、って。
だって、大学も終わりというか、肌寒くなる頃だったですから。
就職活動とかそういうのもあるじゃないですか。
「あなたたちは心配しないんですか?!」と多少声を荒げて言ったんですけど、なんか三人そろってキョトンとしてる感じなんですよ。
「あ、そうですよねえ」なんて言って、でもまたそのまま一緒に話しが始まって…。
もうこりゃダメだと思ってね。
休みをもらって、彼の実家に行ったんです。
何か手がかりがないかと思って。
まあ、僕もついでに親に顔見せようと思って。
そしたらね、彼の家がね。
「ないんですよ」
取り壊したとかじゃなくて、小山のふもとにあったはずの彼の家があった場所。
それが、なんか、もう小山の一部になってる。
いや、僕がここを離れてまだ数年ですよ。
小山にある雑木林の一部になってる。
たとえ、取り壊されたとして、ここまで小山に浸食されてしまうモノか…と。
愕然としましてね。
母親にKの家のことをたずねたんですけど、「そんな家あったっけ?」と言い出すんです。
「小さい頃によく遊びに来てたじゃないか、Kだよ!K!」というんだけど、思い出せない、という。
いや、確かにウチは当時共働きだったし、Kがウチに来てたときに母親がいなかったこともあったけど、まったく覚えがないってのはおかしいですよね。
でもね、親とそうやって押し問答してる間に、僕もちょっとわからなくなってることに気づきまして。
彼の家にも行った記憶はある。
けれども、彼の家の中の記憶がないんです。
彼の親の顔も忘れてしまっている。
時々アイスをもらったりしたような気がするんですけど、まったく顔が思い出せない。
あれ?おかしいな、と思いまして。
思い出そうとするんだけど、思い出せない。
何かが邪魔をしてるような感じがある。
そこでね、あ、卒業アルバムだ!、と思いまして。
見たんですけど。
「いるんですよ」
いるんです、K。
…でもね、なんか、わかんなくなっちゃって。
そのKの顔見てたらね。
なんか全部幻だったんじゃないか、って思えてきて。
だって、Kの家があった場所はその痕跡はない。
なのに、Kだけがいるって、なんかもう、わかんないですよ…。
そもそもどっから通ってきてたっていうのか…。
その後のKですか?
そのまま戻った、って話しは聞いてません。
三人は時々飲みに来るんですけど、聞きはぐってしまっていて…。
向こうからは帰ったって話しはしてきません。
だから、もうKは今は音信不通ですね。
どこかで元気に生きていてほしいと思うんですけど、なんか、小さい頃の記憶も、再会の記憶も、なんかどうでもよくなってきちゃって。
そうしたら、Kの顔もなんか思い出そうとするんだけど、思い出せないというか…。
割れた鏡に写った顔みたいな、そんな感じにしか思い出せなくなってきて。
でね、なんか次は僕のような気がするんですよ。
最近、なんかあの三人と話が合うようになっちゃって…。
どこの誰かも知らないのに。
佐藤さんも、一度くらい彼らと遭遇してるときがあったと思うんですよ。
あの変な三人組です。
全員めがねの。
だから、もし、僕がいなくなったら、あの三人を絞り上げてください。
どこに僕が行ったか、彼らは必ず知ってる気がするんです。
「なんか、今のうちに誰かに話しておかないと、手遅れになる気がして…。」
彼はそこまで言うと、タバコに火を付けた。
「アレ?吸わないんじゃなかったっけ」とオレが聞くと、彼はこう言った。
「あ、そうですね…。」
僕、いつの間にタバコを吸うようになったんでしょう?

(BGM:Harry Belafonte「Danny Boy」from「My Favorite Songs」)
→名曲をすごく歌い上げてくれる。
ステレオなんだけど、モノラルにも聞こえる、というか、すげえ耳元で歌われてる感じすらある。
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